ビジネス

2021.03.03

危機こそ好機。視点のもちかたで「創造性」は育てられる

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危機こそ好機──。未来を知って備えたい。
 
緊急事態宣言が発出された2020年春、デザインコンサルティング企業「IDEO(アイディオ)」東京オフィスの共同代表を務める野々村健一は、「顧客との対話の中で、IDEOの“視点”が期待されている」ように感じた。それも、「アイデアがほしい」というように“答え”を求めるのではなく、一緒にものごとの見方を考えていきたい、というものだった。
 
そこで、IDEO Tokyoは自分たちが考える未来を見るうえでの“視点”を「Emergent Futures(新たな未来の兆し)」というレポートにまとめ、公開することにした。社内外の声を汲み取り、まとめた視点は合計で9つになった。

例えば、コロナ禍が加速させたデジタル化も、その視点の一つだ。ZoomやTeamsなどの会議ツールで打ち合わせをして、Slackで連絡を取り合う動きが職場で広がっている。こうした働きかたはパンデミックの終息後、人々がオフィスに戻るようになっても定着するだろう。つまり、あらゆる体験がオンラインでもオフラインでも体験できる「融合したリアリティ」が我々にとってのデフォルトになるのだ。

「(コロナ禍は)デジタル関連のサービスに興味がなかった人々も引きつけました」と語るのは、「Emergent Futures」を統括したIDEO Tokyoのコーリー・シーガーだ。建築設計士でもある彼は、マインクラフトでディズニーランドを建設する人々の発想に魅せられたと語る。そして、ミュージシャンのトラビス・スコットがFortniteで演奏した例を挙げ、ビジネスにも広がりつつあると指摘する。

「コンサートにしても、単にライブ配信にとどまらない、フィジカルとデジタル両方の“ユーザー体験”をデザインすることになるでしょう。それも今まであったもののデジタル版を再構築するのではなく、インタラクティブでありながら、別の“ユーザー体験”ができる仕組みを作る必要があります」(シーガー)

「EMERGENT FUTURES」9つの視点


柔軟なスペース



コロナ禍で物理的な空間に対する既成概念に変化が。用途や収容人数の判断基準も変わる。星野リゾートのように、顧客の利用状況を可視化する動きも。

加速する進化



リソースを従来とは異なる目的で使う機敏性と創造性に長けた組織は、競争力をもつようになる。食品ロスを防ぐプラットフォーム「KURADASHI」などが一例。

垣根を超えるアイデンティティ



リアルとオンラインの行動がトラッキングされ、互いに影響するように。中国のアント・フィナンシャルは、健康リスクで人を識別できるシステムを開発。

融合するリアリティ



未来では、あらゆる体験がオンラインでもオフラインでも体験可能に。オンライン居酒屋「イキツケ」では、店にいるかのような飲食体験をネット上でできる。
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文=井関庸介 / フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.080 2021年4月号(2021/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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