それぞれ務めていた会社を2016年に辞めたふたりは、オンライン診療と対面診療を組み合わせた「ハイブリッドケア」ビジネスに賭けることにした。ただ、ほとんどの医療コンシェルジュ企業が個人向けサービスの販売に軸足を置いているのに対して、同社は中小企業の雇用主をターゲットに据えている。
「雇用主側と組んで、従来とまったく異なるモデルを提供するというアイデアにこだわりました」。最高経営責任者(CEO)で、フォーブスによって医療分野の2021年の「30歳未満の30人」にも選ばれているマッケンブリッジが説明する。このモデルによって、雇用主は従業員のケアを向上させつつ、コストを削減できるという。
賭けは大当たりとなっている。パンデミックが始まって以降、イーデン・ヘルスは30万件を超えるスクリーニング検査を実施した。同社によると、顧客の雇用主は全体の医療コストを従業員1人あたり年間で最大801ドル(約8万4000円)節約できている。
イーデン・ヘルスは2月18日、シリーズCラウンドで6000万ドル(約63億円)を調達したと発表した。マッケンブリッジの古巣のインサイト・パートナーズが主導し、アミゴス・ヘルス、アスペクト・ベンチャーズ、カンパニー・ベンチャーズ、フレア・キャピタルなどが参加した。これにより、同社の2年間の累計資金調達額は1億ドル(約105億円)に増えた。
重要なのは、患者の体験をできるだけフリクションレス(摩擦のないもの)にすることだ。イーデン・ヘルスはそのために、アプリ、連携したケア、オンラインの医療相談、ポップアップのクリニック、実在の医療機関でのサービスを組み合わせている。また、対応するサービスも、メンタルヘルスや理学療法、専門医療などに広げている。
イーデン・ヘルスの顧客でもあるインサイト・パートナーズのプリンシパル、トマス・クレインは、オンライン診療の活用は「ニューノーマル(新常態)」だと言う。新型コロナはそれを短期的に促進する要因になったが、人々の受療行動を変容させる「社会的刷り込み」は今後も続きそうだとみている。
イーデン・ヘルスの現在の顧客は100社超で会員は4万人ほど。同社は対人診療を提供するクリニックの開設で不動産会社とも提携しており、本拠地のニューヨークですでに数カ所オープンさせている。今後はさらにシカゴやボストン、ワシントンDC、ヒューストン、ロサンゼルスでも開設する計画だ。
同社は目下、あらゆる方面で取り組みを強化している。マッケンブリッジは「オンラインのプライマリーケア(一次診療)を全米で提供しており、会員にすばらしい経験をもたらしています」と自信を示し、今後はできるだけ多くの会員が実在のクリニックも利用できるようにしたいと話した。