その友人によれば、テスラ株は現在、1株あたり883ドルで取引されているが、1株あたりさらに1000ドルほどを上乗せしたコールオプションを一部の人たちが購入しているという。よくわからない人のために言うと、つまり1株あたり約1900ドルということだ。
「1900ドルのテスラは、自由貨幣(フリーマネー)なんだよ」と友人は言った。
どういうこと? と私は尋ねた。
テスラにはカリフォルニア経済以上の価値がある?
友人(名前の公開は望んでいない)によれば、テスラ株が1900ドルになるなら、ヤフーのデータをもとに計算した場合、テスラ社の価値は1兆8000億ドルになるという。
「まともじゃない」と友人は言った。要するに、時価総額が1兆ドルを超えるテック系企業はほかにもあるとはいえ(たとえば、アマゾン、アップルなど)、このバリュエーションは尋常ではないということだ。
確かにそうだ。そんなバリュエーションが、いったいどうすれば理にかなうというのか?
理にかなうわけがない、と友人は断言した。
それを検証する方法のひとつが、カリフォルニア州の経済規模と比較することだ。カリフォルニア経済の規模は約3兆1000億ドルで、いくつかの巨大産業の拠点にもなっている。コールオプションが満期を迎えるまでの1年間で、テスラの価値が世界5位の巨大経済の半分以上になるなんて、ほとんどありえない話だ。
1900ドル前後のオプションで、プレミアムを懐に
そこで話に絡んでくるのが、1900ドルと自由貨幣だ。
友人によれば、コールオプションの満期日は、現在から1年あまり先に設定されており、権利行使価格(ストライク・プライス)が1900ドル前後なら、売ればかなりの金額になるという。満期日に、株価が権利行使価格を上回れば、コールオプションは利益が出る。通常、1件のストックオプション契約には100株が含まれる。
たとえば、2022年3月18日が満期の1810ドルのコールオプションは、最近では1株あたり519ドルで売れた。
テスラ株がそれほど上昇する可能性は低いことを考えれば、その購入価格は高額な出費と言えるだろう。しかしその過剰なコストは、その価格でオプションを売る度胸のある人ならかなりの金を稼げることも意味している。
つまり、こういうことだ。
オプションを売った瞬間から、その残余価値は減り始める。「タイムディケイ」と呼ばれる現象だ。時間が過ぎるほど、価値は目減りしていく。これは特に、ストックオプションのインプライド・ボラティリティ(IV)(オプション契約の価格設定に用いられる予想変動率)が高い場合にあてはまる。簡単に言えば、インプライド・ボラティリティが高いほど、タイムディケイは大きくなる。
「一般的に、インプライド・ボラティリティの水準が高いほど、シータ値は大きくなる」と、OptionsEducation.orgは説明している。
このケースでは、テスラのオプションは売るのに適している。というのも、一部のケースでは、オプション契約が異常に高いインプライド・ボラティリティに基づいているからだ。ヤフーのデータによれば、前述オプションの最近のインプライド・ボラティリティは332%だった。
テスラのオプションのインプライド・ボラティリティは、現在のところ、平均すると71%となっている。