鑑識眼に優れた相手からも、国際的なバックグラウンドを持つ相手からも「わきまえている」と評価されるような正しく装う術と、そこにある嗜みとしての喜びについても触れていきたい。
さて今回のテーマは、ビジネススタイルの基本の基、四季を通じてほぼ毎日肌に直接着る名脇役「シャツ」について論じてみたい。
間違いだらけのシャツ選び
あえて苦言から始めさせていただくが、日本人は正しいシャツの着こなしを知らなすぎる。それも「私は、着るものにはまるで関心がありません」という人ではなく「ファッションにはそれなりのこだわりと自信があります」という人に限って、間違ったシャツ選びに重ねて、さらに間違った着方をしているという惨状なのだ。
「私は大丈夫ですよ」という方には、「あるある」と頷きながら読んでいただければと思うが、巷で多く見かける残念な間違いには、例えばこのようなものがある。
NG1:下に肌着が透けて見える
シャツ自体が、そもそも肌の上に直接着る「肌着」である。シャツの下に、いわゆる肌着が透けて見えてしまっている姿は、男の場合ちっともセクシーではない。下に着たTシャツの柄やロゴが透けて見えているというのも、それではまるで中学生ではないか。もし寒ければ、シャツとジャケットの間にベストを着ればいい。
NG2:デザインが悪目立ちしている
パーティで着るドレスシャツや、休日に着るカジュアルシャツ、お出かけに着るデザイナーブランドのシャツでもなければ、悪目立ちするシャツほど無用の長物はない。襟の裏や前立てにあえて違う色や柄の生地を用いたり、首元のボタンをわざわざ2つや3つにして台襟を高くしたようなもの(バブル時代に流行したドゥエ・ボットーニ、トレ・ボットーニなる過剰なスタイル)は、ビジネスアタイアの見地からはまったく必要がない。
NG3:胸ポケットが付いている
シャツは先述したように、元来は下着である。外出の際は上にジャケットを羽織るのが正しい姿であり、従ってアウターのように胸ポケットを付けた形は軍服や作業着などにはあっても、ビジネスアタイアにおいては正統ではないことを知っておきたい。ましてやそこにペンやケータイ、メガネ、手帳などをやたらと突っ込むのはさらにNGである。
NG4:ボタンダウンシャツはスポーツウェアである
シャツに胸ポケットを付けたのも、襟先が踊らないようにボタンを付けたスポーツウェアを「ボタンダウンシャツ」と呼んだのも、格式よりも合理性を重んじるアメリカ人の発明である。つまりどちらもカジュアルスタイルであり、TPNPO(Time:いつ/Place:どこで/Nationality:どんな国籍の/Person:誰と/Occasion:何をする目的で会うのか)を鑑みると、会う相手がアメリカ人であるとき以外は避けた方がいいだろう。