NG5:イニシャルが目立つ
正しいイニシャルの位置は左身頃。胸ポケットがあるとして、その少し下辺り。なぜそこかというと、洗濯する人間にはその所有者が分かり、本人が着用するときにはベストやジャケットに隠れて見えない=つまり、ひけらかさないdiscreet(控えめ)な場所であるから。なぜか日本で増殖してしまったNGな位置は、左腕(軍服か作業服になる)や袖口(これ見よがし過ぎる)だ。
NG6:コンバーチブルカフス?
袖口をボタンで留めるシャツは、厳しい目にはカジュアルかスポーティであると見なされる。ビジネスアタイアとして考えるならば、カフリンクスを使うダブルカフスを選びたい。燕尾服を着るフォーマルな場面にはシングルカフスもある。着る者にとっては、カフリンクスを選ぶ楽しみも増えようというものだ。「ボタンも使えてカフリンクスも使える」という、一見便利に思えるようなコンバーチブルカフスなる奇異なものが、なぜか日本市場には多く出回っているが、コンバーチブルがカッコいいのはクルマだけである。
NG7:レギュラーカラー?
日本の量販店で売られる「レギュラーカラー」は、海外では「ナロースプレッド(or ナローポイント)カラー」に相当し、フォーマルではなくカジュアル、ないしはスポーツシャツのカテゴリーとなる。ビジネスアタイア的に正しいのは「セミワイドスプレッドカラー」と覚えておいて欲しい。とはいえ、せっかくさまざまなスタイルがあるのだから、「自分のカラースタイルはこれ!」というマイ・スタイルをもつというこだわりがあってもいいだろう。
シャツの王道、本物を知る
さて、ここまで逆説的に「シャツのNG集」をご紹介してきたが、ではNGではない本物のシャツを知りたければ、ぜひ一度、英国が誇る王室御用達の名店「ターンブル&アッサー」のシャツに袖を通してみて欲しい。筆者は比較のために、他にもフランスとイタリアでそれぞれ「名品」と言われるシャツをビスポークしてきたが、「ターンブル&アッサー」のシャツはスタイルも生地も縫製も耐久性も、すべてにおいて素晴らしく、訪英の度にオーダーを重ねている。日本でも幾つかのセレクトショップに扱いがあるようだ。
あるいはフランスなら「シャルべ」も定評がある。イタリアなら、例えば「バルバ」「ギローバー」といったあたりが価格とクオリティのバランスが良く、かつセレクトショップでの扱いも多く、求めやすい。いいシャツは美しく、着やすく、かつ長持ちする。そして間違いなく、あなたのビジネスアタイアを格上げしてくれる。ぜひ本物のシャツを知ってほしい。
大野重和(lefthands)◎1972年、札幌市生まれ。ファッションショー・プロデューサーを経て編集者に。『BRUTUS』『Casa BRUTUS』『Esquire』『FRAME』『GQ』『VOGUE』などの雑誌に寄稿したのち、2007年、レフトハンズを設立。クリエイティブディレクター/コピーライターとして幅広く活躍している。また、2014年から『Forbes JAPAN』コントリビューティングエディターとして国内外でさまざまな取材をこなす。