足跡の化石は、イタリアとスイスの地質学者と古生物学者の合同チームが発見し、科学誌「ピアJ」に発表した。足跡は、約2億5000万年前の古生代と中生代の境目に起きた史上最大の大量絶滅の直後のもので、当時のアルプス一帯は生物の生息に適さない場所となり、生き残った動物は他の地域に移動せざるを得なかったと考えられていた。しかし研究チームは今回の発見により、大量絶滅後もこの地域が全くの不毛地帯ではなかったことが示されていると考えている。
足跡の縦幅は30センチほどで、その主は体長が少なくとも4メートルの新種のワニ型爬虫類とみられている。化石は非常に保存状態がよく、草むらの下の赤茶色の岩の表面で見つかった。研究チームは、三角州付近の古代の海岸を移動していたとみられるこの生物の姿を再現。足跡は元々海底だった場所の泥状の地面につけられたもので、ここはその後隆起してアルプス山脈の岩盤となった。足跡の主は発見場所にちなみ「イソキロテリウム・ガルデッテンシス(Isochirotherium gardettensis)」と名付けられた。
photo by Fabio Manucci
アルプス山脈はかつて海底に位置し、サンゴ礁が広がっていたとみられる。これまでに多数の化石が見つかっており、プロの登山家が恐竜の化石を見つけたこともある。