また今回のツイッター社の対応について、ドイツのメルケル首相はスポークスマンを通し、今回のアカウント停止を問題視し「表現の自由の制限行為は企業の判断ではなく法と立法府によって定められた枠組みで考えるべきだ」と伝えたとも報じられている。
今回のツイッター社の判断とそこから派生したアップルとグーグルの対応への是非について世界各国でさまざまな見解が語られている。
「WEB2.0的」SNSプラットフォームの限界?
本来は一つのインターネットサービス、プラットフォームであるツイッター社が、規約に沿わないユーザーを追い出したにすぎない話ではある。ただこれほど話題になっているのは、そのユーザーが世界的に影響力のある公人であったということもあるが、ツイッターがあまりにも世界的に巨大なプラットフォームであるということも影響しているだろう。
そしてこのような議論は、ツイッターに限らず、一般的にSNSプラットフォームである幾つかの大きなサービスでも今後も繰り返されていくことになるだろう。
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WEB2.0を牽引する形で巨大化、そして寡占化していったこれらのサービスは、今回のような議論を繰り返しながらも、どんどんとその影響力を強めていくのだろうか? そしてそれがこれからの未来へとさらに覇権を拡大しているのだろうか。
今回のトランプ元大統領アカウント問題は、WEB2.0的なSNSプラットフォームの一定の限界を示していると私は感じる。そこでこれから先の未来、どのようなDX(デジタルトランスフォーメーション)をSNSプラットフォームが目指すべきなのかについて考察してみたい。
分散型SNS「マストドン」が目指していた世界
SNSプラットフォームのDXにおいてこれから必要なキーワードは「分散化」だと私は考える。
このキーワードを実現しようとしていたプラットフォームは、既に2016年に誕生している。今回のトランプ元大統領アカウント問題でもよく併せて語られている「マストドン(Mastodon)」である。
マストドンはドイツのオイゲン・ロホコ(Eugen Rochko)によって開発された分散型ミニブログ(つまりツイッターのような)サービスだ。マストドンの仕組みはオープンソースで誰にでも公開されており、インスタンスと呼ばれるマストドンを起動させるサーバーを立てれば、誰でもツイッターのようなプラットフォームを作ることができる。ユーザーはいずれかのインスタンスを選んで利用することができるが、別のインスタンスに属する利用者と交流もできる。その辺りの制限は各インスタンスで細かい調整が可能な仕組みだ。
このマストドンのような仕組みが仮にもっと世界中で拡大し定着できていれば、今回のトランプ元大統領アカウント問題に対しては、次のような対応になっただろう。