破竹の快進撃を続ける『鬼滅の刃』のブームは、アニメの貢献を抜きには語れないだろう。
アニメ制作を担ったのは2000年にわずか数人で設立されたユーフォーテーブル(以下、UFO)。「UFOはオリジナル作品だけでなく、漫画原作のアニメ化を提案されてもヒットさせる力があり、打率が高い」と、アニメ業界の誰に聞いても圧倒的なクオリティに異論を挟む者はいない。新興の制作プロダクションだが、200人の社員を抱え、脚本から作画、演出まで映像制作のほとんどの工程を自社の社員で行っている。
また、スタッフとファンが交流できるようにカフェを運営。こちらも拡大する一方で、国内、韓国、中国で計9店舗、新宿ではダイニングを運営する。コロナ以前は朝から長蛇の列がカフェの前にできるほどだった。
近藤光社長は出身地の徳島でアニメツーリズムも成功させている。同県は阿波踊りシーズン以外の観光を課題としており、その期待以上の効果をもたらしたのが09年から開催されているアニメの祭典「マチ★アソビ」である。一回あたり8万人超が訪れ、経済効果は7.3億円。知事や地元経済界をあげての一大イベントになっている。
(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
では、若い制作会社がここまで事業を成功できた要因は何だろうか。映像ビジネスは夢のある仕事だが、制作会社の運営は楽ではない。「アニメーション制作者実態調査報告書2019」によると、平均年収440万円、アンケート回答者の約4割が年収300万円以下である。長時間労働で作業環境は厳しい。
そうしたなかで新興のプロダクションが事業規模を成長させ、内製化を果たせるようになったのか。その経営に迫りたいのだが、UFOは20年に東京国税局から法人税法違反の告発を受け(後に修正申告)、近藤社長は表舞台には出てきていない。業界関係者に話を聞いていくなかで、私はガンダムシリーズのプロデューサーとして知られ、日本動画協会元理事長の内田健二サンライズ元会長からこんな話を聞く機会があった。話は15年前に遡る。
「当時、新番組はすべてチェックして見るようにしていました。ある時、深夜に非常にグレードの高い番組があり、ファンのニーズを捉えた内容もさることながら、メインタイトルの下の(c)マークにUFOの名前がある。著作権を取っていることに驚き、どういう人たちか知りたくて会いに行きました」