「平成の歌姫」ブームを担ったクリエイターは新時代に何を手放すのか?

西大寺 原氏作品

浜崎あゆみの全作品(デビューから2009年)をはじめとして、数多くの大物ミュージシャンのCDジャケットやロゴなどのグラフィックワークを手がけてきた現代美術家・クリエイティブディレクターの原神一氏。

現在は、歴史ある奈良の4つの大寺に奉納する「今までの1000年 今からの1000年」をテーマにしたアートプロジェクトための屏風や、2021年7月に世界中から各宗派の宗教家を招致、世界平和を祈る「世界平和願いの祭典」(オリンピックパラリンピック公認イベント)のためのオブジェやシンボルマークなどを制作。また、「ART+DESIGN+時代感」をテーマに、アートの精神性を経営パワーに転換する新しい企業ブランディングを手がけている。

常に時代の最先端をつくり出してきた原氏は、このコロナ禍をきっかけとした新しい時代をどのようにとらえているのか。また、その変化に際し、捨てるべきもの何かを聞いた。


null

──新型コロナウイルスのパンデミックによって、2020年は激動の1年になりました。現在のこの状況、時代性をどうとらえていますか?

フランスの産業革命以来続いてきた「欲望の資本主義」は終わったと思います。これまで人々は、お金とモノが中心の「物質的幸せ感」を追い求めて、地球や人間性を破壊し続けてきました。これからは地球や人間を含む全ての生き物に優しい「精神的資本主義」に変わっていくのではないでしょうか。

またパンデミックなどにより、街に出る自由、愛する人に会う自由、お葬式をする自由……いろいろな自由が閉じ込められ、自由がいかに人間にとって大事であるかを再認識するきっかけになったのではないでしょうか。

──その変化に際して、ご自身や仕事のやり方について変わったことはありますか。

私は45年前、コンピューターエンジニアの仕事につき、初めてデジタルに出会って身体までがデジタル化し、病気になりました。

その時に、人生を物質的な資本主義的世界からクリエイティブな「精神的自由な世界」へと切り変えましたので、現在も基本的には変わっていません。

ただ、コロナで世界中が混乱するなか、1人でいることが多くなりました。それによって、今まで味わったことのない孤独感を感じ、その反動として、愛の重要性を感じるようになりました。その結果、人や地球を「愛すること」を強く意識するようになったような気がしています。

null
原神一氏作品「1000年ループ」スケッチ
次ページ > 精神的な幸せ感を追い求める時代へ

文=谷本有香

タグ:

連載

「やめる」を決める

ForbesBrandVoice

人気記事