これらの訴訟により、フェイスブックは同社の歴史でも特に大型の買収案件だったインスタグラムとワッツアップの売却を強いられる可能性がある。フェイスブックはインスタグラムを2012年4月に10億ドル(約1040億円)で、ワッツアップを2014年2月に190億ドル(約2兆円)で買収した。
この2社の買収が、独占状態を作って利用者と広告主の選択肢を減らすことを意図したものだったという米当局の主張は、全くもって正しい。フェイスブックはこれまで、ソーシャルネットワークの分野で勢いを得た企業を全て買収することを目標としてきた。
これはインスタグラムとワッツアップだけでなく、より知名度が低い「ゴワラ(Gowalla)」や「tbh」などのアプリ買収にも当てはまる。同社は他にもツイッターやフォースクエア、スナップチャットの買収を試みたことがあり、この他にも私たちが知らないものが多くあるはずだ。
私は自分の学生らに対し、フェイスブックとマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)の戦略を次のように説明している。会社に対して、まるで神のような意思決定権がある人を想像しよう。この人は20億人以上のユーザーの行動を見張れるピラミッドの頂上に座っており、自分の地位を脅かすような競合企業の動きを察知すると、その企業を買収するか、その商品やサービスを模倣する。
これは、イノベーションを完全に阻害する行動だ。ある企業がフェイスブックからの買収提案を断れば、フェイスブックは市場を支配するまでその会社のバリュー・プロポジションを模倣し続ける。ザッカーバーグの戦略ははっきりしており、「買収できないなら模倣する」だ。
これは今まで何度も繰り返されてきたことだ。スナップチャットの場合、フェイスブックはその主要機能のクローンを4度にわたり投入。最終的にインスタグラムのストーリー機能をヒットさせ、成功を収めた。
また、グループビデオチャットサービスのハウスパーティー(HouseParty)のように、買収を検討したものの、フェイスブックユーザーのアンケート調査を行った結果、買収ではなく単なるクローン版の導入を決めたこともあった。同社は最近、企業買収を控えてきたが、それは今回のような訴訟を避けるためだ。