ヤンデックス・タクシーはロシアの検索エンジン大手のヤンデックスの配車部門だ。同社のEMEA(欧州、中東、アプリカ)及びユーラシア部門を担当するAram Sargsyanによると、ヤンデックス・タクシーは2018年後半に黒字化を達成して以降、赤字になっていないという。
ヤンデックス・タクシーは伝統的なタクシー事業に加え、配車サービスやフードデリバリー事業、さらにYandex Lavkaのブランド名で生鮮食品のデリバリーも行っている。
今年第3四半期のヤンデックス・タクシーの売上は約2億5000万ドル(約260億円)だった。米国のウーバーがパンデミックを受けて売上を急落させた一方で、17カ国で事業を展開するヤンデックス・タクシーは、なんとか収益性を維持できているとSargsyanは話した。
同社はウーバーと同様に、パンデミックの発生後にフードデリバリーや生鮮食品の宅配に注力を開始し、社内のリソースや人員の配置を改めたという。
「当社はチームを再編した結果、一時は社内の人員の約半分をデリバリー部門に割り当てていた」とSargsyanは述べた。「可能な限りのスピードで各国のオペレーションの再調整を行った結果、約3週間でその作業を完了した」
同社は売上の詳細を開示していないため、現状の配車サービスとデリバリーの売上の比率は不明だが、ヤンデックスはEコマース事業も行っており、会社全体で収益を確保しようとしている。
ヤンデックスは直近ではイスラエルでも、デリバリー部門を立ち上げている。同社はこれまで新たな市場では、まず配車サービスを立ち上げてからデリバリー事業を開始していたが、今後はその逆のパターンをとるケースも増える見通しという。
今後の事業拡大にあたり、課題となるのは各国の当局の規制への対応だ。タクシー事業は多くの国で、厳しい規制の下に置かれている。
一方で、ロシアの首都モスクワで、勢力を伸ばしつつあるのがWheelyと呼ばれる配車企業だが、同社は当局との間で問題を抱えているという。ヤンデックスはロシアでコンプライアンスを重視した運営を行っているが、Wheelyはデータの収集にあたって度々、当局の注意を受けている。
「モスクワで配車事業を行う場合、企業は当局の指導に従わねばならない。しかし、Wheelyは当局の命令に違反するオペレーションを行っている」と彼は話した。
「モスクワの当局は他の多くの世界の都市と同様に、自動車や公共交通の集中管理を行っている。彼らは街路を走行する全てのバスや、タクシーの動きを把握しようとしている」と、Sargsyanは続けた。