管理職になり訪れた、“冷めた契約書”をチェックする日々
法務部の仕事とは、ビジネスの実現のために回避すべきリスクと取るべきリスクについて、法律的な観点から、時には立場を超えディスカッションすることです。
法務担当者は、ビジネスの推進者から直接「想い」やリアルなビジネスの現場を聞くことができます。けれど管理職になるとメンバー経由でしか、その「想い」に触れられないんですよね。媒介された思いは、伝言ゲームのように真意から遠ざかり、熱量も感じられません。
“冷めた”契約書をダブルチェックする日々。私にとってのモチベーションは、目の前の人の「想い」に触れることだ、と気付きました。その人のために壁をどう越えるか、自分の頭と手を動かしていたかったのです。
そんな自分に言い聞かせていたのは、「いつか尊敬できる誰かに、右腕として頼られるようになりたい。そのためにはマネジメント力も必要だ」ということ。
しかしいくらそう納得させようとしても、自分に蓋をしながら続ける管理職は楽しくありません。3年間のリーダー、マネージャー経験を経て、プレイヤーに戻りたいと強く思うようになりました。
法律の変更を常にキャッチアップすることが求められる法務業務。関連書籍は手放せない
求めたのは「足りない自分」に気づける場所、尊敬できる上司
子どもが生まれたことが私を大きく変えた、とは思っていません。
ただ、泣いている我が子を保育園に預ける時は、多くの親がこれで良いんだろうかと苦悩しますよね?そこから「自分が楽しんでないんだったら仕事を辞めて育児に専念した方がいい。楽しいと思える仕事をしよう」と考えるようにはなりました。
私が楽しいと思える瞬間ですか?それは「自分が持ち合わせてなかった視点に気づいた時」ですね。
長年勤めたことでその会社特有の法務課題に慣れたこともあり、「その考え方があったか!」と膝を打つような瞬間は訪れなくなっていました。
そこで、全く違う分野で、かつ高い視座から的確なフィードバックをしてくれる上司のいる会社に行こうと考えたのです。
転職先となったマネーフォワード。そこには私の求めた、新しい分野の法律業務と弁護士資格をもちながらビジネス経験も豊富な上司がいました。
戦闘モードから武装解除した私に訪れた、新しい関係性
上司は証券会社で企業内弁護士として活躍し、大手グループの金融サービス事業会社取締役まで務めた人物。そんな上司やプロジェクト責任者でもある経営層から受けるフィードバックはとにかく新しい気づきだらけで、管理職だった頃の私の「冷めた気持ち」は転職後どこかへ消え去っていました。
しかもこの上司、私と同じように「プレイヤーとして培ってきた資産を食いつぶすのではないかという恐怖」から地位を捨てマネーフォワードに入社してるんです。
法律の変更点を常にウォッチし現場の最前線で経験を積まなければならない。法務に携わる者として同じ感覚を持っていることに信頼を高めました。