経理部門は会社の中での「エッセンシャルワーカー」だ(Unsplash)
「会社にはコロナ禍であっても問答無用で請求書は届いてしまいます。もし請求書が営業宛てに届いたとしても、それが放置されたままにならないように、経理担当者は出社して確認するということをやっています。経理がそれを1枚1枚スキャンして、データ化して、支払いをして、会計データに起こさなければ、帳簿をつくることができないわけですし、会社は絶対に回らないのです。
極端なことを言えば、社長や営業部長が倒れても、会社はある程度の期間まわりますが、経理の場合はそうはいきません。経理の機能がストップすれば、次の月から取り立てが始まったり、与信が悪化して貸し剥がしに繋がったりと、大変な事態になるわけですから」
コロナ禍での請求書処理の手間を、現場の経理担当者へと押しつけるのではなく、社内で然るべき改革が行われて良いはずだとも堀地は指摘する。
紙の請求書に潜む「倒産」のリスク
さらにこの問題は、リモートワークが普及する企業内で、経理担当者だけがコロナ禍でのリスクを負わされているというだけの話ではないと黒﨑は述べる。
「ある監査法人の方から聞いたケースですが、感染者が出たことでビル1棟丸ごと封鎖になってしまったことがありました。そのビルに入っていた会社は、1週間以上、出社禁止措置をとったのですが、そうすると請求書が会社に届いていても経理は受け取りに行くことができません。その月はなんとかなったそうですが、こういう事態が不規則に続けば、経理業務に支障をきたして、支払いに遅れが出てしまっても全く不思議ではないという状況だったそうです」
仮に支払いが遅れた場合でも、取引先に事情を話してことが収まるならば、大きな問題にはならないかもしれない。しかし、事情によっては、この遅延分を補うために借り入れに動く必要があったり、支出を急激に抑えなくてはならなかったりと、かなり苦しい状況に立たされるということもありうる。ぎりぎりの資金繰りを行なっている会社にとっては、1カ月支払いが遅れただけでも致命傷となるかもしれない。