ドイツのメディアコングロマリットのベルテルスマン傘下のランダムハウスは、世界の出版社が参加したオークションで、競合を打ち負かし、サイモン&シュスターを獲得したという。買収手続きは2021年に完了する見通しだ。
ベルテルスマンCEOのトーマス・ラーベはプレスリリースで、「書籍ビジネスは、185年以上も前から当社のアイデンティティの一部であり、今日までその魅力を失っていない」と述べた。バイアコムCBSの株価はこのニュースが報じられた後も、ほとんど変化しなかった。
1924年設立のサイモン&シャスターの2019年の売上は8億3000万ドルで、米国の5大出版社の中では最小の規模とされている。
一方で、ペンギンランダムハウスは米国最大の書籍出版社であり、毎年1万5000タイトル以上の書籍を発行し、年間の販売冊数はオーディオブックや電子書籍を含めると6億冊以上に達している。同社は先日、オバマ前大統領の回顧録「A Promised Land」を発売し、ベストセラーに送り込んでいる。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、今回の買収が米国司法省による独占禁止法絡みの調査を受ける可能性が高いと指摘している。
ベルテルスマン・ミュージック・グループ(BMG)を保有するベルテルスマンは年間約70億ドルをコンテンツ関連に出資し、傘下のテレビ製作会社フリーマントルは「アメリカン・アイドル」や「プライス・イズ・ライト」などを手がけている。
業界誌のPublisher’s Weeklyによると、今回のサイモン&シャスターの買収は、2014年にハーパーコリンズがハーレクインを3億5000万ドルで買収して以来、北米の出版業界で最大の規模だという。
サイモン&シャスターはこれまで、スティーブン・キングやボブ・ウッドワード、アニー・プルークスなどの著名作家のベストセラーを送り出してきた。同社はまた、アーネスト・ヘミングウェイやF・スコット・フィッツジェラルドなどの文学界の巨匠を輩出したことでも知られており、1350人を雇用している。