代表の天野は、製造業のDX、そしてロボットたちと作り出す未来について熱く語る。スマラボ東京がオープンしてまだ2カ月だが、非常にいい手応えを感じているという。
「スマラボ東京を作った意図は、2つあります。1つは、今スマートファクトリー化しなければ日本の製造業は世界の潮流からどんどん置いていかれるという危機感。一時代を築いた日本のものづくりが海外勢にシェアをどんどん奪われ、工場の生産性や価格競争など厳しい環境にさらされているのに、日本の工場の設備は30〜40年前のまま。どこかで思い切って新しい工場を作らなければいけないのです」
しかし、ただ物を作るだけではダメで、新たなルール、ビジネス産業モデルを作っていかなくてはならないと天野は指摘する。
「日本発のスマートファクトリーのソリューションを海外に展開し、外貨獲得のツールとする。それがもうひとつの意図です」
製造業のそれぞれの分野でグローバルの競争から後れをとったとしても、日本にはデジタルとリアル(ものづくり)の2つをセットにすることで世界と戦える力があると天野は強調する。なぜなら、日本の産業の強みは、車やバイク、コピー機など異素材を複雑に組み合わせて作る、ハードとソフト両軸の組み合わせにあるからだ。この利点をそのまま工場に転用することで、国際競争力を得られるという。
ではなぜ、愛知県や静岡県といった工場が多い場所ではなく、あえてビジネス街の都心にスマートファクトリーを作ったのだろうか。
「ものづくりの場合、機械のスペックを見せるショールームが大半ですが、スペックはビジネスと直結しない部分がある。スマラボ東京では、イノベーターに対して技術的、ビジネス的、財務的なアプローチをみんなで共有して磨き上げていきましょう、という場にしたい」
天野のビジョンは無限に広がる。幕末の志士を生んだ松下村塾のように、スマラボ東京でインプットを得て、製造業の伝承者となって世界各地でチャレンジし、世の中を変えていく起点にしたいと考えている。
「日比谷という場所は官公庁や大企業の本社に近い。物事を動かす中枢に近いところから発信力を持つことで、未来の話がしやすくなります。人間は、最後はロジックではなくパッション、感情でものを決めていく。だからここで高揚感を得て、変化のきっかけにしてもらいたいのです」