「わが社は『100の問題を100人で1問ずつ解く経営』を掲げて権限委譲を進めています。社長が全問解こうとすると時間がかかるし、じっくり考えられないから正解からも遠くなる。問題をみんなで分ければ100倍速くなります。4月のCMもマーケチーム任せ。僕がクリエイティブを見たのは、ぜんぶ完成した後でした」
もともと宮田は何でも自分でタッチしたがるタイプだった。しかし、ビジネス側の業務が忙しくなり、5年前にプロダクトの現場から離れざるを得なくなった。
「手放すうちに、全方位に向いていたこだわりがどんどん抜けてきました。最近はめったに口出ししないので『仏のよう』と言われますが、こだわるポイントが狭くなったというのが実態に近いですね」
業界でシェア1位を誇るSmartHRだが、労働人口全体でいうとまだ1%しかカバーしていない。今後はユーザーを広げると同時に、タレント(人材)マネジメントの領域にも事業を展開する計画だ。
事業の規模や領域が拡大すると、現場への権限移譲がセクショナリズムを招きかねない。宮田もそのリスクに気づいており、20年7月、会社のバリューに「認識のズレを自ら埋めよう」を新たに付け加えた。
バリューのコピーを書いたのは宮田だが、全社会での発表中、一部の社員がさっそく「ズレ埋め」という絵文字をつくり、流行らせた。ボトムアップの文化が根づいたSmartHRの社員らしい反応だ。
「規模が大きくなっても勝ち続ける会社にする」と宮田。現場が自律的に動く強みを残したまま、いかに組織として意思統一するか。そこが今後の腕の見せどころだ。
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