預り資産・運用者数No.1の資産運用ロボアドバイザー企業を率いる起業家。財務省、マッキンゼーと輝かしい経歴をもつが、原点は「プログラミング教室」にあった。
「『ものづくり』する金融機関」。ウェルスナビの代表取締役CEO、柴山和久が掲げるビジョンである。
同社が手がけるロボアドバイザー「WealthNavi」は、年収や資産運用の目的など5個の質問に答えるだけで利用者の「リスク許容度」を算出し、各個人が最適なポートフォリオを基に資産運用できるFinTech系サービスだ。働く世代を中心に支持を集め、預かり資産残高は2020年10月時点で3000億円を突破。同サービスではダントツ国内第1位だ。
その強さの秘訣は、冒頭のビジョンに詰まっていると言っても過言ではない。同社で働く正社員およそ80人のうち、その約半数をエンジニアやデザイナーが占める。「社内でサービス開発をしているから、お客様からのフィードバックを迅速に反映できる」と柴山は胸を張る。
ものづくり集団としての強みは、大手金融機関との連携の推進力にもつながっている。実は、ウェルスナビの預かり資産のうち約半数は、SBI証券など提携パートナー経由のものだ。創業直後から名だたる企業と連携できた理由を、柴山は「補完関係を築けるから」だと説明する。
「私たちは、ものづくりに強みをもっていますが顧客基盤が小さかった。一方、大手の金融機関には大きな顧客基盤と目利きの力があります。お互いの得意なところを持ち寄って役割分担し、オープンイノベーションを起こしていく。資本主義とは、そういうことだと思うんです」
これらの戦略は、創業前から描いていたものなのか。そう聞くと、柴山は笑いながら首を横に振った。
「全然。起業直前に『スーツはジーンズの敵』だと言われた。その後の“空白の4週間”のおかげでいまがあるんです」