岡村アルベルトは、複雑で非効率な日本のビザ申請の現状を何とかしたいと2015年に「one visa」を立ち上げた。母がペルー人、父が日本人の岡村はペルーで生まれ、8歳のときに来日。大学卒業後は東京出入国在留管理局の窓口に勤務し、ビザ申請書類の約97%に不備があり、5、6時間の待ち時間もざらという現状を目の当たりにした。
one visaは、ビザ申請書類のインターフェースをウェブ上でわかりやすく変換し、本人や企業が情報を共有しながら入力することで、ミスの少ない書類作成を支援する。
日本で働く外国人労働者は19年10月に165万人を突破。20年4月には人材不足が深刻な分野での単純労働を認める新しい在留資格「特定技能」制度が新設された。one visaは「特定技能の外国籍人材がクリーンな環境下で雇用されるための持続可能なスキーム構築」にも取り組んでいる。
外国人の単純労働者は、長い間正式に認められていなかった。一方で、「技能実習生」が実質的に低賃金の単純労働を担わされ、社会問題になった。岡村は「いつか、日本が国として外国籍の人材を積極的に受け入れるのか否か、決断する日が来るはず。それまでは外国籍の人が『日本に行きたい』と思える環境を維持したい」と話す。最終目標は、「世界から国境をなくす」こと。
「one visaで蓄積した信頼性の高い情報を与信という形で活用し、誰がどの国へ行く際も、ビザに関しては最小限のハードルで移動できる世界を目指します」
おかむら・あるべると◎1991年、日本とペルーのハーフとして、ペルーで生まれる。8歳のときに日本に来日。2014年に甲南大学を卒業後、東京出入国在留管理局の窓口で、史上最年少で現場責任者となる。2017年、one visaをリリース。