〈Aさん〉
努力家兼天才。カリスマ性があり、独自の視点や抜群の行動力で何をやっても社内トップの成績を挙げ続ける替えの効かないスーパー人材。
〈Bさん〉
非凡な才能はないものの、常に長期的な目線に立ち、繰り返し業務を効率化するプロセスをつくることが得意な人材。
もちろん、正解はありません。企業規模や成長フェーズにもよりますし、人材の組み合わせで相乗効果が生まれることも当然です。しかし、アマゾンでは後者〈Bさん〉の長所に着目し、徹底して育成していくという一貫した姿勢が見られます。これは、私が米アマゾン本社で働くなかで最も衝撃を受けたことの一つです。
個々人がプロフェッショナルとして責任をもち、成果にコミットしていくことは、基本的かつ当然の責務です。ただ、それだけでは組織が継続して成長していくことは難しい。大切なことは、個々人の取り組みや成果の先で、個人戦ではなく、誰がやっても勝てる、成果が出る、団体戦の仕組みをつくっていくことなのです。
筆者は日本とアメリカ双方のスタートアップや大企業で、多様な企業文化を体験してきました。そのなかでも、仕組み作りを重視するという企業文化は、他のアメリカ企業と比べても非常に特異な、アマゾンをアマゾンたらしめるポイントだと感じています。
「仕組み作り」を大切にする企業文化
では、アマゾンには具体的にどのような企業文化が根付いているのでしょうか。
まず、物事の本質的な改善に繋がらない作業は全く評価されません。
例えば、頑張っている感を演出するために、すぐに終わった仕事の報告メールをあえて深夜に出したり(実際、私もやっていたことがあります)、機械が代行できるような単純作業や繰り返し業務をこなすことで、仕事をした気になっているケースなど。
アマゾンでは、どうすれば業務を自動化・省エネできるかを考え、そのプロセスをつくっていく姿勢が常に求められます。
言い換えると、仕組み作りが非常に重要視されるのです。徹底的に業務の無駄を削ぎ落とし、新たに生まれた時間で人間にしかできない仕事に専念し、そこでイノベーションが生まれたら、そのイノベーションを仕組み化する。この繰り返しです。