ビジネス

2020.11.10 08:00

アマゾンが最強であり続けるワケ


私がアマゾン・ジャパンに勤務していたとき、こういう経験がありました。

現状の規模は小さいものの、潜在的な成長可能性が大きいと判断したメーカー各社と9つの新規ブランド、約400商品を立ち上げました。オリジナル商品は顧客に受け入れられ、すぐに年間10億円の売り上げを超える人気ブランドに成長したのです。私個人としては、成果が出ていれば良い、と考えていましたが、アマゾンではそれだと不十分。「それってスケール(ものごとを普遍化し、同じ取り組みを広範、大規模に展開していくこと)するんだっけ?」と自問自答し、どうすれば物事を普遍化し、同じ成功事例を広範・大規模に展開していけるのか、を問われます。

実際に私はその後、なぜその企業に注目をしたのか、同様に成長の可能性の大きい企業をみつけるためにはどのような手順を踏むべきか、どういう判断基準が必要か、商品立ち上げに伴いどのような課題が発生するか、そして、どのような解決策があるのか、という議論を重ねてこのケースにおける仕組み作りを行い、社内にシェアしました。

この経験を1度きりの成功事例にとどめないため、ステップや成功の秘訣を言語化し、他のメンバーでも実施できる、再現性の高い成功モデルへと昇華させていくことが求められるのです。

アマゾンで「仕組み作り」が重要視されていると感じた具体例を、もうひとつ別の角度からご紹介しましょう。

どれだけ細心の注意を払っていても、打ち間違いなどのヒューマンエラーが起きてしまうことがありますが、こうした場合、個人の失敗として責められることはありません。その代わり、インプットミスが発生した根本要因を追求して、一定条件下における自動のエラーチェックや第三者によるダブルチェックプロセスを入れるなど、ミスを予防できる仕組みを構築、改善することにエネルギーが注がれます。

ミスした個人ではなく、そのミスを生じさせた仕組みや環境に目が向けられるのです。これによりミスを隠そう、というよりも、むしろミスを積極的にオープンにしていくことで全体のフローを改善していこう、という雰囲気が生まれます。

「仕組み作り」が生まれる「仕組み」を仕組み化する


さらに、アマゾンでは「仕組み作りが生まれる仕組み」までもが仕組み化されています。

たとえば、14項目からなる「リーダーシッププリンシパル」というアマゾンの信条の中に「Invent and Simplify」という項目があります。単発のイノベーションを起こすだけでは不十分であり、いかに物事をシンプルにして普遍化すべきかを考えなければいけない、また、イノベーションが継続的に生まれる仕組みをつくるべきである、という理念です。

この理念は日常的な会話でもよく使われます。日々の議論や意思決定の際に取り入れられており、評価の基準にもなっています。このようにして、全社員が自然に、どうすれば物事を仕組み化していけるのか、どうすれば物事をスケールさせていけるのかを考え、実践する風土が具現化されているのです。
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文=竹崎孝二

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