25人目の裁判官が気づいた「自然死」の可能性 鑑定書の衝撃事実|#供述弱者を知る

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井戸弁護士は、裁判所での協議の内容を一枚の紙にまとめ、西山さんの両親に説明した。「裁判所との面談のご報告」と題したその紙を、角雄記記者(38)が両親から受け取った。そこには、裁判所に呼び出された後、何があったのかが詳細にまとめられていた。

裁判所との面談のご報告


【事前の連絡内容】
事前の連絡では、裁判官が証拠について緊急に聞きたいことがあるので、主任弁護人だけでいいので来てほしいとのことでした。したがって、主任(裁判官)の杉田判事と私が面談するのだろうと思っていました。

【実際の面談の持ち方(事実上の三者協議)】
現実には、裁判所は、合議体(すなわち、裁判官3人)が出てきて、検察官も呼ばれていて、事実上の三者協議でした。私が、それなら、他の弁護人にも来てもらうのだったと抗議したところ、後藤真理子裁判長は「今日は、裁判所の意向をお伝えするだけなので」と弁解していました。

【裁判所の話の内容】
1. 提出されている証拠から、T氏が致死性の不整脈によって死亡した可能性について問題意識を持っているので、この点について、補充的に主張・立証をする意思があるかを尋ねたい。するか否かを3月中に回答してほしい。する場合は、その後1カ月(すなわち4月末まで)でしてほしい。
2. 抗告審の審理が遅れたことを申し訳なく思っている。今後は、迅速に進めたい。
3. 証拠開示を検察官に命令・勧告することは考えていない。
4. 弁護人からは、新たな主張・立証を準備しているとの話があるが、争点が拡がると審理が遅れる。裁判所の問題意識は、「致死性不整脈」の問題に限られている。
5. 今後三者協議の場を持つか否かについては、補充主張の内容次第では持つ必要があるかもしれないが、その必要がなければ考えていない。

【裁判所の雰囲気】
協議は、後藤裁判長が仕切っていました。主任裁判官に任せていたのでは審理が進まないので、裁判長が前面に出てきた感じです。それなりに記録を読み込んでいることがうかがえました。

【全体の印象】
裁判所が、(チューブが抜かれたことによる)酸素供給途絶以外の死亡の可能性に関心を示していることは、希望を持たせるものだと思います。弁護団としては、4月末までに主張・立証の補充をしますが、その後、裁判所が三者協議を持つ必要がないと判断すれば、早ければ、6月~7月に決定が出る可能性が出てきました。

ところで、司法解剖とは事件死の可能性がある場合、指定された鑑定医によって行われる解剖のこと。その内容の詳細、死因など所見が示された司法解剖鑑定書は、重要な証拠の一つになる。通常、警察は報道機関に見せず、この段階でも取材班は鑑定書を入手できていなかった。

法廷で新たな動きが生じたことで、急きょ鑑定書を入手し、内容をつぶさに調べてみると、そこには驚くべきことが書かれていた。
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文=秦融

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