1961年創業、「金沢カレー」の元祖として知られる「チャンピオンカレー」が、今年に入ってアメリカ進出を果たし、好調なスタートを切った。6月下旬にカリフォルニア州ロングビーチに海外1号店を出店すると、8月にはロサンゼルス市リトルトーキョーに旗艦店「Champion’s Curry Little Tokyo」をオープン。旗艦店の初日は、テイクアウトのみで2時間待ちの行列ができる盛況ぶりだったという。
新型コロナウイルスの感染が拡大しているロサンゼルスでは、レストランでの店内飲食は現在も禁止されている。この規制の影響をもろに受ける飲食店はダメージが著しく、経営難に直面する事業者も少なくない。そんな中で、チャンピオンカレーのアメリカ進出を後押しし、好調を支えるものはなんだろうか。
西海岸に進出 売り上げは予想の3倍
新型コロナの感染拡大によって、世界的に大きな打撃を受けた外食産業。一方で、店内飲食に依存する必要がないファストフード・チェーンは、テイクアウトやデリバリーが好調だ。コロナ禍で「守り」の経営に転じた飲食店も多いなか、チャンピオンカレーがアメリカへの事業拡大に踏み切った背景には、増加するテイクアウト需要への期待がある。
「本当に今年アメリカに進出すべきなのかという議論はありました」と述べる南。しかし、テイクアウト需要が大きく伸びたことで、5月の緊急事態宣言下のような最悪の状況でも、チャンピオンカレーの売り上げは昨対比マイナス30%までしか落ちなかったという。
「『コロナ禍でも、テイクアウトでカレーは売れる』という自信が、アメリカ進出へと背中を押してくれました。アメリカと日本では状況が異なるので不安もありましたが、いざ出店してみると、現地のアメリカ人から好評をいただいています」
ロングビーチにあるモール「SteelCraft Long Beach」に入る1号店は、テイクアウトだけの小型店ながら、多い日で1500ドルを売り上げる。この売り上げは損益分岐点の約3倍にあたり、事前予想をはるかに上回るという。新型コロナによる売上減に苦しむ他の飲食店と比較すれば、非常に好調だと言える。
金沢カレーがテイクアウトに強いワケ
またこの1号店は、テイクアウト特化型のカレー店という意味でも新たな挑戦となる。「店内飲食ができなくなってしまったことで、苦労する部分も多いのでは」と尋ねると、意外な答えが返ってきた。
Zoomでの取材に答えてくれた株式会社チャンピオンカレー代表の南恵太氏
「もともと金沢カレーというのは回転率を意識した業態でやっているので、テイクアウトに求められるスピード感にも非常に相性が良いです。実際、国内の店舗で飲食をされるお客さまの滞在時間は、早い人だと10分程度ですし、提供時間でいうと、平均して3分以内に出しています。このような『超高回転』に特化した業態は、私たちが金沢カレーを作った当初からのやり方なのです」