チャンピオンカレーが「スピード」にこだわる理由は、実はカレーという食べ物の特性にある。
カレーは加熱をし続けると、スパイス成分が揮発して味が変わってしまうため、品質を一定に保つことが難しい。一般的なカレーチェーンでは、スパイスが揮発しない程度の低温で保温し、提供時に小鍋に移して再加熱するという方法がとられている。しかしこの方法だと、提供までに時間がかかり、回転数が落ちるため、結果的に単価を上げざるを得ないというデメリットがある。
それに対してチャンピオンカレーは、創業当時からスピードを重視し、回転率をあげることで、加熱を続けてもスパイスが揮発する前に提供できる仕組み作りに努めてきた。煮詰まりが発生することなくカレーを提供できるので、品質を一定に保ちながら、同時に低価格かつスピーディに提供することが可能だ。
チャンピオンカレーが創業から培ってきたこのスピードを重視するノウハウが、「うまい・早い・安い」が求められるテイクアウト事業にも活かされているという。
「日本のカレー」知るきっかけはアニメ?
アメリカでの顔となる旗艦店は、ロサンゼルスのリトルトーキョーに出店。日本の外食チェーンがアメリカに進出する場合には、日本にルーツを持つ人々を主なターゲットとして、日系人居住区に店舗を出すパターンが少なくないが、南がリトルトーキョーに出店した狙いは、全く別のところにあるという。
ロサンゼルスのリトルトーキョーにあるチャンピオンカレー旗艦店
「今この地域は、日本のポップカルチャーを好むアメリカ人にとって、聖地のような場所になっているのです」
ロサンゼルスの「リトルトーキョー」は、日本の文化を求めて現地のアメリカ人が足を運ぶ観光地となっている。新型コロナが感染拡大する以前は、秋葉原のように、アニメのコスプレを趣味にする人々が週末に集まり、イベントなどを行なうことも珍しくなかった。日本のポップカルチャーに日々アンテナを張り巡らせているアメリカ人に「日本のカレー」を知ってもらうことが、現地での認知向上をうまく進めるための秘訣だ。
「アメリカ人が『日本のカレー』を知るきっかけは、日本のアニメを通してということが少なくないようです。カレーは日本の国民食なので、アニメの日常生活の描写として登場することも多いと思います。現地の人はそれを見て『あれは何を食べているんだろう』と疑問や興味を持つみたいなんですね」