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立ちはだかるうま味調味料の「壁」


「日本のカレー」が多くのアメリカ人に受け入れられていけば、近い将来に多店舗展開へと向かうことも十分にあり得る。濃厚な旨味とドロっとした舌触りが特徴の金沢カレーを、たくさんのアメリカ人に体験してもらいたいという思いで、伝統の味と製法にこだわり、これまで現地での開発を続けてきたという。

しかし今回のアメリカ進出に向けて、大きく変更を加えた点もある。それはいわゆる「No-MSG」、うま味調味料を使わないという決断だ。

「日本で生産しているカレーにはうま味調味料を使っていますし、現代では多くの検査・実証例により、うま味調味料は体に悪いものではないと判断されています。しかしながら、アメリカの消費者の中にはうま味調味料に対する偏見を持つ人が少なくないのも事実です。

事の発端は1968年に、中華料理店で食事をした人々が健康被害を訴え、それを調査した科学者が、原因はグルタミン酸ナトリウム(MSG)ではないかと、医学論文誌に発表した経緯があると言われています。その後アメリカでは『中華料理店シンドローム』という言葉が流行し、『うま味調味料は危ない』という噂が広まったと言われています」

南は当初、現地でOEM生産を請け負ってくれる企業に、日本と同じようにうま味調味料を使ってほしいと打診したという。しかし、彼らには「使っても良いけれど、そうするとアメリカのマーケットには受け入れられないと思う」と突き返されてしまったそうだ。

日本と違ってアメリカでは、工場で生産される食品でもうま味調味料がほとんど使われていない。そのためアメリカの消費者は敏感に「この味は……!」とうま味調味料に気がつくことがあるそうだ。現代では健康被害が科学的に否定されていても、アメリカでは根深い偏見があり、消費者に受け入れられにくいという事情がある。

「アメリカ進出の際に、味の面で苦労したのはこの点ですね。うま味調味料を使わなければ、カレーの味のバランスが変わってしまうので。オーガニックな食材だけでうま味が補えるように、現地企業と綿密な話し合いを重ねながら、製造工程を工夫することでこの問題は乗り越えました」


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このような「文化の壁」を乗り越えつつ、「日本のカレー」の米国市場定着を目指しているチャンピオンカレー。今後、アメリカへと浸透していけば、ラーメンブームに続くヒット食品となる可能性も秘める。ルーツとしては西洋料理にありながら、日本で発展したカレーは、アメリカ人に「目新しさ」と「親しみやすさ」の両方を与えるという意味でもポテンシャルが高い。近い将来、アメリカ西海岸で日本のカレーブームがやってくるかもしれない。

文=渡邊雄介

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