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2020.10.24 12:00

コロナ禍にがん宣告。事業承継のプロ・山野千枝が気づいた「命のリレー」

「ベンチャー型事業承継」代表理事、山野千枝。今年、辛いがん治療を乗り越えた

「ベンチャー型事業承継」代表理事、山野千枝。今年、辛いがん治療を乗り越えた

中小企業かつ同族経営の「アトツギ社長」の事業承継を支え、そのイメージを変革してきた女性からForbes JAPAN編集長宛てに1通のメッセージが届いた。
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「ドン引きされるかもしれないんですが、坊主頭の私を取材してくれないですか?(笑)(中略)意外といると思うんですよね、人知れず病気と闘いながら仕事してる人って」

一般社団法人ベンチャー型事業承継(事務局・東京都千代田区)代表理事であり、企業向けのブランディング企画などを手がける千年治商店(本社・大阪市中央区)代表取締役も務める山野千枝だ。規模は小さくても大きな可能性を秘めた企業を発掘するForbes JAPANの恒例企画「スモール・ジャイアンツ アワード」を立ち上げた3年前から、アドバイザリーボードを務め、編集部にとっても一緒に盛り上げてきた同志のような存在だ。

関西を拠点にしつつも、全国的に事業承継の分野で彼女の名はよく知られる。そんな山野が、コロナ禍に子宮体がんだと告知され、人知れず闘病していたというのだ。4月下旬にがんの摘出手術を終え、5月から3カ月間は再発リスクを封じ込めるために抗がん治療を受けた。その影響で髪の毛が全て抜け、副作用も残っていたが、徐々に回復して、いまでは仕事に完全復帰している。
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現在、51歳。今年は、事業としてもスケールアップする予定だった。闘病体験、手術と抗がん剤治療の選択、新たな気づき......。人生の大きな節目を迎えたという山野がインタビューで語った混じり気のない言葉をお届けしたい。


今年、山野が代表を務める千年治商店では設立から4年目で初めて新卒社員二人を迎えた。またベンチャー型事業承継では、全国の中小企業の後継者を対象にしたピッチコンテスト「アトツギ甲子園」(中小企業庁主催)が2021年2月に初開催されるのに向けて、運営事務局を務め、全国展開が始まるタイミングだった。

がん告知。手術さえすればいいと思っていた


新型コロナウイルスの感染拡大のニュースで世界がざわついていた頃、山野の体に異変があった。不正出血に気づき、近所の婦人科クリニックに駆け込んだ。細胞検査をしてみると、陽性。子宮体がんであることがわかった。

幸い、がんの進行は初期段階。これがのちに、悪性レベルが高く、再発リスクも高いことが分かり抗がん治療が必要だと主治医から告げられる。山野は当時を率直にこう振り返る。

「最初は、手術してがんをとったら治療は終わるんだと思ってました。1カ月後に手術が決まってもあんまり深刻じゃなかったですね。正直、コロナで手術が受けられなくなるかもしれない、と。そちらの方が不安でした」

もっとも、当初の気がかりは自分の体よりも、仕事のことだった。初めて新卒社員を迎える会社で、どうやって社員に伝えたらいいか、はたまた伝えない方が良いか迷った。

「結局、全部言いました。千年治商店は、取締役含めて社員は5人。嘘偽りなく、風通しのいい会社だからこそ入社してくれた人たちです。社外には公表せずに、社内メンバーにだけ、まずはがんと告知され、手術をすることを伝えました」

同時に、ベンチャー型事業承継のメンバーにも伝えた。理事にはマクアケ社長の中山亮太郎、大都社長の山田岳人も名を連ねる全国的な組織だ。なぜ社外には言わないことにしたのだろうか。

「コロナでステイホームとなり、世の中のスピードが遅くなった時期とたまたま重なりました。リモートワークのため、オンラインでの予定は調整しやすく、3カ月間すれば抗がん剤治療が終わります。病気のことを気づかれずに、仕事を続けられると思ったので、言う必要がありませんでした」

ここで山野が「言う必要がない」といったのは、山野流の気遣いだったと後で気づかされた。
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文=督あかり 写真=本人提供

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