金銭をめぐる決断は、ほかの多くの決断とは異なる。お金に関して決断を下す際には、たくさんの不確定要素が絡んでくるからだ。多くの人は、不明点の多い状況下で決断を下す術を身につけておらず、それが、お金に関して適切な決断を下すうえでの妨げとなっている。
たとえば、自動車やテレビなど日常的に使う製品の購入を検討しているとしよう。製品を選ぶにあたっては、情報をたくさん収集し、各製品の良い点と悪い点をリストアップし、自分にとってどれが最も適切かを決定する。こうしたケースでは、たとえ不確定要素があったとしてもごくわずかだ。たいていは、事実を列挙して比較すればいい。
人は得てして、お金に関する決断を下す際にも、同じやり方がいいと考える。それまでの経験を振り返ったり、アドバイザーに相談したり、ほかにあれこれ手を尽くすことで必要な情報が得られて、最適な決断に導かれると思いこんでいるのだ。
たしかに、そうした手順はきちんと踏むべきだ。しかしこうした手順は、製品を購入する場合と同レベルの確信を保障してくれるものではない。金融の世界には数多くの不確定要素が存在するし、あなたの人生にも、金銭的な決断を左右する不確定要素が存在する。お金をめぐる決断が正しいか正しくないかは、多くの場合、将来に何が起こるか次第だ。そして、将来とは不確実なものだ。
お金に関する決断を下そうとして物事を検討するなら、不明な点の多い状況下で決断を下す方法を学ぶ必要がある。ちょうど、ポーカーをプレイするときのような状況のことだ。
ポーカーの元プロプレイヤー、アニー・デュークは、著書『確率思考 不確かな未来から利益を生みだす』(邦訳:日経BP)で、ポーカーには不確実性がつきものだと述べている。ポーカーでは、カードに注意を払うことはできるが、ほかのプレイヤーがどんなカードを持っていて、どういった戦略でどう賭けてくるのか、次にどのカードが出るのかを知ることはできない。