パランティアは上場にあたり、伝統的プロセスではなく直接上場を選択したため、新株の発行による資金調達を行っていない。直接上場において、既存の株主らは公開市場で株式を売却し、現金化できる。
今回のIPOで2人のビリオネアたちが巨額の報酬を得たことは間違いないが、背景にあるストーリーはもう少し複雑だ。
パランティアのCEOであるカープは、彼の持ち分の11%にあたる1410万株を1億3500万ドルで売却した。税引き後の金額で、彼は約1億300万ドルの利益を得たことになり、企業のCEOがIPO後に自社株の売却から得る利益としては、異例の額と言えそうだ。
ただし、目論見書によるとカープは、IPO時に売却可能な約2050万株を確保しており、その全てを売却した場合、税引前で2億ドル近くを入手していたことになる。逆張りの姿勢で知られる彼は以前、「富は文化的腐食を招く」と述べていた。フォーブスはカープの保有資産を10億ドルをわずかに上回る水準と試算している。
一方で、ティールは9月30日以降に2735万株を売却しており、これは目論見書に記載されている彼の持ち株の7%に相当する。ティールはIPO前の時点で3億3000万株近くを保有していたが、その半分近くは彼が経営する3つの投資会社の外部投資家のものだと推測できる。その3社とは、ファウンダーズ・ファンドとクラリウム・キャピタル、ミスリル・キャピタルの3つの投資会社だ。
SEC(米国証券取引委員会)に提出された書類によると、30日のパランティアの上場以来、ティールは税引前で2億7900万ドル相当の株式を売却している。ここから税金を差し引いて、さらに投資家に渡った分を差し引いた場合、ティール個人の取り分は約1億300万ドルと試算できる。
ティールは不動産やフェイスブックなどの企業の株式も保有しており、フォーブスは彼の保有資産を約25億ドルと試算している。
ペンタゴンやCIA、ICE(合衆国移民・関税執行局)などの政府機関を顧客に持つパランティアは、創業17年目にしてようやくIPOに漕ぎ着けた。ただし、報道によると同社の直接上場については、一部の株主がそのプロセスに不満を示している模様だ。技術的な不具合や記録ミス、混乱のために株式を売却できなかった投資家も居るとされている。
パランティアは9月30日に上場を果たす前に、2度に渡り上場日を延期し、目論見書の内容を7回も修正していた。