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2020.10.06 06:00

今年の調達額は4兆円突破、加熱する「SPAC」上場の最前線

ヴァージン・グループの創設者で会長のリチャード・ブランソン(Photo by Robin Marchant/Getty Images for SiriusXM)

ヴァージン・グループの創設者で会長のリチャード・ブランソンは、新たに立ち上げた特別目的買収会社(SPAC)の上場により、最大4億8000万ドル(約506億円)の資金調達を計画中だ。VG Acquisition Corpと呼ばれるこの会社の株式は、VGAC.Uのティッカーシンボルで10月2日から取引開始となり、4800万株の売り出し価格は10ドルとされている。

ヴァージンの関係者によると、調達した資金の使用用途は明確には定まっておらず、「新規のベンチャービジネス」のために用いられるという。

SPACは、独自の事業を持たない空箱の企業(いわゆるペーパーカンパニー)であり、上場時には事業の実体を持たず、将来的に有望な会社と合併や買収を行うことを目的に設立される。投資家はSPACの選別眼のみを信じて資金を託すため、「ブランクチェック(白紙の小切手)」とも呼ばれている。

ヴァージンの声明によると、VG Acquisition Corpは同社のコア領域である旅行や、レジャー、金融サービス、健康、テクノロジー、再生可能エネルギーなどの分野に主眼を置いていくという。

ブランソンはヴァージンのポートフォリオを時代に沿ったものにしようとしており、最近では米ワシントン州ロングビューで設立されたリサイクルが困難な廃棄プラスチックの再生を手がける「Agilyx」や、西インド諸島とラテンアメリカに焦点を当てた風力発電ベンチャーの「BMR」への投資が注目されている。

さらにブランソンは先日、ポーランドのクラクフ(Kraków)に拠点を置くAIを活用し大気質の改善を目指すスタートアップ「Airly」の、200万ドルのプレシードラウンドに参加した。パンデミックにより、ヴァージンアトランティック航空のビジネス帝国が脅かされた後、ブランソンはイノベーション志向を強め、彼の原点にある起業家精神に立ち戻ろうとしている。

ブランソンがSPACのスキームに参加するのは、これが初めてではない。2019年10月に彼は、航空宇宙会社「ヴァージン・ギャラクティック」を、ベンチャーキャピタリストのチャマス・パリハピティヤ率いるSPACと合併させてIPOを果たし、8億ドルを調達していた。

バロンズが引用したデータによると、今年は既に116件のSPACが絡む新規株式公開が実施され、調達額の合計は440億ドル(約4.6兆円)に達し、過去5年間の合計を突破したという。

プレイボーイもSPACを用いて上場予定


ここ最近ではメディア企業のプレイボーイが、SPACを用いた上場計画をアナウンスしており、英国のプレミアリーグのアストン・ヴィラのオーナーであるエジプトの富豪ナセフ・サウィリスも、自身のSPAC「Avanti Acquisition Corp」をニューヨーク証券取引所に上場させようとしている。

さらに、映画「マネーボール」で、ブラッド・ピットが演じた役柄のモデルとなったMLBのオークランド・アスレチックスでGMを務めたビリー・ビーンも、「RedBall Acquisition Corp」と呼ばれるSPACを設立し、スポーツやメディア関連の企業を上場させようとしている。

また、ヘッジファンド出身のビリオネアのビル・アックマンは今年7月に自身のSPACを立ち上げ、「我々と合併を希望する魅力的なユニコーンを探している」と述べた。彼が設立したパーシング・スクエア・トンチン・ホールディングスの株価は、同社が明確な事業を持たないにもかかわらず、7月末のIPO価格の20ドルから、現在は22ドルを超える水準に上昇している。

編集=上田裕資

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