ビジネス

2020.10.06

パンク寸前のコールセンターを救った34歳

パイロットの免許をもつASAPPのサポズニックCEO。AIを搭載した自社のソフトについても、航空機のコックピットが自動化によって変わり続けていることを引き合いに、「安全性は大きく向上したが、まだパイロットは必要とされている。自動化は、パイロットの負担を軽減しているだけ」と語る

新型コロナウイルスのパンデミックにより、銀行や航空会社のコールセンターにかかってくる電話が急増し、対応が難しくなっている。

「電話越しに怒鳴っている顧客に対応しながら、問題解決に必要な情報を探し回る窓口担当者の認知負荷を想像してみてください」と語るのは、米サンフランシスコに拠点を置く、人工知能(AI)搭載型カスタマーサービス・ソフトウェア開発企業「ASAPP」のグスタヴォ・サポズニックCEO(34)だ。

コールセンターへの問い合わせを音声認識・自然言語処理したASAPPのソフトは、推奨する回答や関連情報を担当者の画面に表示する。これにより、担当者がアプリケーションを切り替える必要性が減るのである。サポズニックは機械学習を利用し、優秀な社員の経験をASAPPのソフトに学習させた。学習したソフトは顧客からの問い合わせに回答し、求める情報にたどり着くための有効な道筋をコールセンターのスタッフに示すのだ。

顧客企業は1時間に解決できる電話の件数を40%から150%以上に増やすことが可能で、その結果、コールセンターのスタッフのストレスと離職率を低下させられるという。

調査会社ピッチブックによると、ASAPPは計2.6億ドルの出資を受けており、直近の時価総額は8億ドルに上る。売上高は推定4000万ドル。航空会社ジェットブルーや通信大手スプリントとの複数年契約が売り上げの柱となっている。

文=アラン・オンズマン & ケンリック・カイ 写真=ジャニー・オズボーン 翻訳=松永宏昭

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 8月・9月合併号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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