クラウン・エステートが2020年9月18日に発表した2019/2020年度の年次報告書によると、同機関の保有資産価値は1.2%減少し、134億ポンド(約174億ドル、約1兆8218億円)となった。今夏にロンドンがロックダウンされ、閉鎖を余儀なくされた店舗の賃料が未払いとなったためだ。
報告書によると、もともと「困難」に直面していたクラウン・エステートの不動産を借り受けるテナントの状況が、英国を襲った新型コロナウイルス感染症によってさらに悪化したという。
しかし、前例のない状況でありながら、クラウン・エステートは2020年3月末締めの前年度に、それなりの利益を上げている。最高責任者のダン・ラバドは報告書で、純利益は0.4%増益となる3億4500万ポンドだったと述べている。これに関してラバドは、「私たちのポートフォリオの底力と、チームの積極的なアプローチが反映された」と説明している。
新型コロナウイルスと王室
2010年に開かれた英下院議会財務省委員会で取り決めがなされて以降、正式には「国王の公の不動産」と呼ばれる不動産には、商業施設がひしめくロンドンのウエスト・エンド地区一帯や、ウィンザー城があるウィンザー・グレート・パーク、アスコット競馬場などが含まれている。
そうした不動産を管理するクラウン・エステートは、1961年から独立して営利事業を行っている。得られた利益は財務省に納められており、国の財政への貢献額は過去10年間で37億ドルにのぼる。この分は、女王個人の純資産額には含まれないと考えられている。
今後も「経済的・市場的な混乱」が見込まれることから、クラウン・エステートは2020年、財務省への納入分を「段階的なプロセス」で行う計画だ。つまり、前年度分の利益である3億4500万ポンドは分割して納入される。
分割初回分の8700万ポンドは7月に納入済みで、「取引状況の変化に応じて追加納入される」という。女王は、クラウン・エステートから納入された額の25%を「王室助成金」として政府から受け取るのが通例だが、2年分が未払いとなっている。
さらにクラウン・エステートは、2020年の「全従業員へのボーナス支給」を(取りやめてはいないものの)据え置いているほか、取締役と経営幹部への基本報酬額を「一時的に」20%カットしている。
フォーブスは2019年5月、エリザベス女王個人の純資産額を5億ドルと推定した。一方、クラウン・エステートが管理する英国王室領の資産価値と、「ランカスター公領」と呼ばれる女王の信託財産を合わせれば、推定総額は250億ドルとなる。