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2020.09.30 16:00

「真のDXで日本を牽引する存在に」Speee・大塚英樹の強い決意

Speee代表取締役・大塚英樹

コロナ禍でのIPO延期を経て、マーケットからの高評価で見事リトライ上場という奇跡で乗り越えた、Speee。モバイルデータの解析を手始めに、10年以上もデータドリブンな事業を連鎖的に生み続け、それを加速させる経営システムを構築してきた同社ならではの、DXの独自アプローチとは。


データが自分の未来を教えてくれた


「withコロナの時代は、moreDXの時代です。世界中のあらゆる企業が、未来へ向けて猛加速せざるを得なくなりました。ただこの流れは、スピードの差こそあれ、すでに起こっていたことです」

4月に予定していた上場をコロナ禍のため見送ったものの、7月に見事JASDAQリトライ上場を果たしたSpeee。その代表取締役を務める大塚英樹は、周囲から“100年でもっとも不幸なタイミングで上場しようとしている経営者かもしれないですね”とまで囁かれたという。それでも決して動じなかったのは、早くから培われてきた大塚の「経営者マインド」によるのかもしれない。

「子供の頃からセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文氏や、ビル・ゲイツ氏のビジネス書を読み込み、次第に経営者の道を志すようになりました。私がIT業界に興味を持ち始めた2000年前後の市場では、成長著しいIT業界に資金が大量に集まっていました。社会を変える可能性の比類なき高さが、多くの人たちの期待を生む。その高すぎる期待故に将来の予測ができない。その予測困難さに対して、さらに期待が集まることによって生まれる熱量が、お金や人材を引きよせ、新しい産業が急速に形成される。

変化が大きい領域に身を置くことで、短期間で飛躍できる可能性があるということは、当時の私にとって大きな魅力でした。同時に、変化が大きい環境こそ経営手腕が発揮できる業界だと思えたことも、多くの著名な経営者の方々に憧れていた私にとっては重要な要素でした」

その後、大塚はモバイルのマーケティングデータ分析を手がけるようになる。マニアックなほどにデータ分析に没頭する中で、データに潜む可能性に魅了されていく。データを観察することで、多くの課題が見えてくる。その課題は事業開発の種へと発展していく。

「当時はそうした言葉はありませんでしたが、データドリブンな事業展開を知らず知らずのうちに始めていたのです。自分に特別な才能があったとは思いません。

まずは粗い仮説を持つ。その仮説を検証するために、様々なデータをかき集め、さらに分析と検証を重ね、学習をする。その作業を経ることで、粗い仮説は強い仮説へと進化する。そのプロセスの重要性と高い実用性に気付いただけなのです」



DX推進の鍵は中小企業


「新しい事業を創造するときに体感できる仮説・検証・学習による高揚感は非常に楽しいものでした。徹底的に分析したデータをもとにした事業化なので、成功率も高い。

事業開発を通じて様々な分析と検証を重ねていくと、日本社会全体がもつ課題感にも少しずつ気付いていきました。大手企業はDXを推進しており、事業部ごとに深く進化している。しかし横の連携はシステムが違うという理由でデジタライズされずに放置されているケースが数多くあったのです」

そうした大企業へ向けて、大塚は祖業であるデータ解析事業を「MarTech事業領域」と再定義し、課題解決の範囲を広げていく。企業内外のデータ資源を利活用するコンサルティングを行い、統合的にシステムを連携させマーケティングプロセス全体をデータ分析の網にかけて、効率化を支援するビジネスだ。バリューチェーン上に数多くの部門を抱える大手企業ほど、連携メリットは大きくなり、DXのための予算も計上されているため、事業が軌道に乗るのも早かったという。

しかし次の段階で大塚の目が向いたのは、中小企業だった。積極的に様々な仮説・検証・学習を重ねていく中で、社会全体をDXでスパイラルアップさせるためには、大手企業だけではなく、中小企業が鍵を握っていることに気付き始めたのだ。

「2014年から始めたのが、中小企業向けプラットフォームサービスの『X-tech事業領域』です。どんな施策も一般の消費者に恩恵が行き渡るまでがセットだと思います。したがって消費者に近い中小企業がDXに踏み切らない限り、国としての競争力が向上されるような大きなインパクトのDX革命は行われないのだと思います」

とはいえ予算が限られ、デジタル置換によって効率化できる部門も少ない中小企業にとって、固定費がかかるコンサル方式での導入は難しい。

「MarTechの堅調な売り上げによって経営を安定化させながら、さらに隠れた課題感に挑むためにX-Techを開始しました。最初は中小企業経営者にメリットをご理解いただくのに苦労したのですが、昨今のコロナ禍でDXは喫緊の課題となり、状況は変化しました」

X-Techの仕組みはこうだ。多くの小規模事業者によって構成され、経営が分散している産業セグメントは、DX化が遅延しやすい構造になっている。その解決のために、分散している小規模事業者を集約するプラットフォームをオンライン上に構築。利用料は成功報酬型で提供する。




その成功モデルといえるのが、中古不動産売買のための「イエウール」であり、外装リフォームに特化した「ヌリカエ」だ。それまで存在しなかった業界のバリューチェーンを業界特化型で生み出すことで、市場を活性化することができたという。

バリューチェーン全体をDXさせる


しかしそれまでチラシや飛び込み営業で行っていた企業活動を、単にデジタルに置き換えるだけでは、そのメリットを十分に享受しているとは言えない。大塚はそこにある解決難度の高さを突破した先にこそ、新たな可能性を広げるイノベーションがあるという。

「例えば不動産業界ではチラシ客は2-3カ月で決めると考えられています。その期間外の営業施策はそもそも存在しないのです。しかしデジタル集客はその数カ月前のまだ考え始めたばかりの顧客まで集めることが可能です。私たちはそうした潜在顧客にもDXされた消費者体験を提供したい。そのために、デジタルを中心にした営業活動の支援まで、企業側と伴走します。中小企業のDX推進は大手企業とは異なる、産業・業界特化型のアプローチが必要であり、そのためには深い業界・顧客理解が不可欠です。誰もがデジタル化の恩恵を受けるためには、バリューチェーン全体をDXさせることが重要だと考えているからです。

デジタルトランスフォーメーションという言葉は聞こえは良いですが、DX化が遅延している産業や業界には、遅延しているだけの根深い理由があるのです。それを真摯に学び、正しく理解しない限り、真のDXを牽引することはできないと考えています。ただ、それができる企業には、全く新しい消費者体験が生み出せる可能性が広がっているのです」

さらにSpeeeは、トヨタ自動車と協業したブロックチェーン開発や海外事業、ヘルスケア事業なども行っている。

「事業を立体的に展開できる設計にすることによって、持続的な拡張の可能性を最大限に保有したまま、シナジー効果が効くようにモデルを組んでいます。また、市場や事業の特性を踏まえ、規律をもった投資管理を行える経営管理体制と、それを改善し続ける組織を作り上げてきました。そこに先端テクノロジーを組み合わせて、日本を代表するDXカンパニーになっていきたいと考えています」

次世代DXカンパニーとして最も重要なこと


加速度的に新たなビジネスを創出し続けるSpeee。起業家精神に溢れる大塚にとって、今回の上場はどのような意味をもつものなのだろうか。

「多額な投資資金を得るためだけのIPOではありません。それよりもお客様に選ばれる企業になる、働く場所としても知ってもらえるということも意識しています。

Speeeはこの先ますます拡大していきます。日本には根深い構造の問題によって、DXの恩恵から取り残されている業界がまだまだ存在していると考えています。その業界こそが我々の主戦場です。実際、最前線の現場では、DXの思想や戦略の美しさだけでは変えられないことばかりです。本当に社会に変化を促すためには、極めて泥臭く、献身的に態度変容を促していくための絶え間ない取り組みこそが成否を分けるということを、我々は過去の様々な事業開発における成功と失敗から学んできました。

そして、何よりも、会社全体がそこにこだわり、誇りを持つ組織文化であることが、次世代のDXカンパニーとして最も重要なのです。

今、当社は時代の追い風を受けて、非常に恵まれた環境に身を置くことができていると考えています。だからこそ、長期的な視点に立ち、積極的に新しい挑戦を続け、日本のDXを牽引する存在になることに強い使命を感じています。今回の上場はその決意表明でもあり、ここからが腕の見せどころです。その先には、子供の頃に憧れた経営者たちが見た景色があるのだと信じています」


おおつか・ひでき◎1985年、埼玉県生まれ。2015年にAERAの「日本を突破する100人」に選出。2017年からREAPRA Venturesの外部アドバイザーを務める。

Speeeは「デロイト トウシュ トーマツ 日本テクノロジー Fast50」7年連続成長企業上位ランクイン。Great Place to Work® Institute Japanが実施する「働きがいのある会社」ランキング上位連続受賞などがある。

▶株式会社Speee HP

▶日本を代表するDXカンパニーを目指し、ブランドステートメント「DX Democracy」を策定


Promoted by Speee │text by Ryoichi Shimizu│photograph byShuji Goto│edit by Akio Takashiro