経済・社会

2020.09.27 10:00

「デジタル競争力」が高い国は? 世界トップの共通点に学ぶ


デジタル化が進む国の共通点


世界競争力レポートとデジタルライザー・レポートには、2つの大きな違いがあります。まず、世界競争力レポートは国の総合的な競争力を分析しているのに対し、デジタルライザー・レポートが扱うのは、デジタルエコシステムおよびマインドセットによって示される、デジタル競争力のみです。次に、世界競争力レポートは1年単位での変化を分析しているのに対し、デジタルライザー・レポートが対象としているのは、過去3年間の各国の歩みです。

ランキング以外にも、私たちは、デジタルライザー上位となった国々が遂行してきた政策についても分析を行いました。この分析からは、すべてのデジタルライザーには、他の政府が自国のデジタル戦略を策定する際に参考となる共通点があることがわかりました。このレポートには、各地域のデジタルライザー上位3カ国について詳しく紹介しています。ここでは、そのベストプラクティスの概要をご紹介します。

1. 人材に投資し、企業がイノベーションと起業家精神を実現しやすい環境を整えてきた


例えば、インドネシアやドミニカ共和国は、デジタル教育に多額の投資を行っています。インドネシアでは、デジタル人材育成奨学金プログラムを開始し、2万人に資格を提供しています。一方、ドミニカ共和国では、すべての子どもが学校でノートパソコンを使えるようにする「ワンコンピューター」というイニシアティブを導入しました。

デジタルライザーのその他の成功要因としては、国際的に有能な人材を惹き付ける力があったことが挙げられます。スタートアップビザプログラムを導入しているフィリピン、そして、インドネシア、フランス、ラトビアなどの成功もその好例です。

さらに、デジタルライザーは簡単に、迅速に、そしてお金をかけずに企業を立ち上げられる環境を整えています。例えば、アゼルバイジャンでは、会社設立にかかる期間を3日以上から1日未満に短縮し、ラトビアでは、若い企業を支援するための特別税制と資金調達制度を導入しました。

2. 長期的なビジョンに沿って、包括的かつ速やかに実行可能な計画を遂行してきた


ほとんどのデジタルライザーは、フランスの「フレンチテック」、サウジアラビアの「ICT戦略2023」、「ビジョン2030」のような、トップレベルのサポートを備えた計画的かつ包括的な政府プログラムを有しています。

デジタルライザーにとって、スタートアップ企業は重要な注力分野です。その成長は、日本の「J-Startup」プログラムや、インドネシアの「スタートアップ企業1000社の創業支援」など、大規模な取り組みによって支えられてきました。例えば、フランスは50億ユーロのファンドを新たに設立し、アルメニアではスタートアップ企業に最大5万ユーロの支援を行っています。

私たちのレポートからは、一部の国ではデジタル技術が急速に発展している一方で、他の国々は差をつけられていることがわかります。米国、スウェーデン、シンガポールなどは、デジタル・チャンピオンとして認識されていますが、私たちの調査結果は、それらの国が必ずしも力強いデジタルライザーではないことを示しています。

過去3年間で相対的な地位をわずかに向上させることができたのはシンガポールだけで、それとは対照的に、米国やスウェーデンは同期間に競争力を低下させています。ここからわかるのは、デジタル競争力はダイナミックに発展するものであり、適切な政策を導入すれば、新しいデジタル・チャンピオンは世界中どこにでも生まれ得るということです。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Philip Meissner, Professor ESCP Business School, Founder & Director European Center for Digital Competitiveness;Christian Poensgen, Founder & Director, European Center for Digital Competitiveness

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