杉浦は「人が生まれる瞬間」に関わりたいと助産師を志望し、4年ほど病院で助産師として勤務した後、結婚・出産。夫のオランダ転勤が転機になった。
オランダは子育て支援が充実しているものの、文化や言葉の壁はある。生まれたばかりの長女にはアレルギーがあり、栄養士に相談したが、「毎食お粥を与えるのはよくないのでクラッカーにするように」と言われた。不安や葛藤の中、日本語で気軽に相談できる専門職がいたら、と何度も感じた。
次女の出産を経て、帰国。子育てに追われながらも「助産師として何かできるのでは」という思いがあった。周囲には夫の転勤や子育てで休職中の助産師が多い。病院でのフルタイム勤務は難しくてもできることがあるはずと考えた。
18年からオンラインでの発信や相談などを続け、「ソーシャルビジネス」として起業を決意。19年から試行を始めた。現在、海外在住者を含む16人ほどの助産師らが在籍し、時差を利用して夜間や海外からの相談にも対応している。
4月に実施した無料のオンライン「両親学級&児童館イベント」には国内外の助産師200人以上の助産師が協力し、2週間で800組以上の親が参加。新型コロナの影響で、通院や立ち会い出産が制限され、病院や自治体による両親学級や児童館の閉鎖などが相次ぐなか、自分が思い描く出産や育児ができないと悩む母親は少なくない。
「1人で抱え込まずに、まずはつながることが大切。企業や行政、医療機関とも連携し、孤立する母親を1人でも減らしていきたい」
すぎうら・かなこ◎1985年、愛知県生まれ。助産師、看護師、保健師。大学卒業後、助産師として都内の病院などに勤務。マタニティヨガやベビーマッサージ講師としても活動。