イーゴリ(38)とドミートリ(34)のブフマン兄弟は、ロシアの地方都市ヴォログダにある大学で、ともに応用数学を学んでいた。プログラミングに夢中になっていた2人は、小遣い稼ぎのつもりで簡単なゲームを作成し、ネット配信を始めた。単純なゲームだったが、お試し版を無料、完全版を15ドルに設定したところ、雪だるま式にユーザーが増えていった。
月1万ドルを稼ぐようになったブフマン兄弟は2004年、プレイリックスを設立。16年に箱庭パズルゲーム『ガーデンスケイプ』がトップセールスを記録すると、その後は年平均35%の成長を遂げ、19年の売り上げは17.5億ドルに達した。
新型コロナウイルスの感染拡大により欧州各地でロックダウンが始まると、彼らは独自の戦略に出る。コロナ不況で多くの企業が広告宣伝費の削減を図り、フェイスブックをはじめとするプラットフォームから一斉に広告を引き揚げた。ところがプレイリックスは、この期間にウェブ広告を集中投下したのだ。
その結果、外出を制限されたスマホユーザーが同社のアプリに流れ込み、4月のダウンロード数は前月の倍となる100万を記録した。この期間の広告相場は急落していたので、広告費は通常時よりずっと安くあがったとイーゴリは明かす。コロナ禍において、大幅なコスト削減、そして何百万人もの新規ユーザー獲得という難題を、同時にクリアしてのけたのだ。
近年、プレイリックスは投資家の強い関心を集めている。大手ゲーム会社から買収のオファーも相次いでいるというが、イーゴリは「こんなに儲かっているのに会社を売る理由がない」と、にべもない。
プレイリックスは、投資による収益を他企業の買収に充て、自社のさらなる成長を目指す計画だ。M&Aの機会は常に狙っているという。
「世界最大のゲーム会社になってみせる」
ブフマン兄弟の野望は大きい。