西武グループの代表後藤がオープニングイベントの中で何回も使ったキーワードがある。
「ベッドタウンからリビングタウンへ」
戦後の高度成長期に、東京は多摩、埼玉は所沢、大宮など、郊外へ住宅を求め、都市西部エリアは発展した。半世紀を経て線路網、道路網だけでなく、IT化も含め関東都市部はすべてに「近く」なった。昨今では、コロナ禍のために、生活も仕事も、そのスタイルを変えざるを得ないニュー・ノーマル時代となったため、「住む」を再定義すべき時代となっている。
所沢駅は毎日10万人以上が利用している。世帯数は昭和30年から一度も減ることなく増加し続けており、人口は34万人。現代のニューファミリー層と呼ばれる30代40代の家庭が中心で、仕事に生活に多様なライフスタイルを持つ人たちだ。市の統計によれば、「所沢に住み続けたい」「どちらかといえば住み続けたい」と答えた市民は、全体の79.3%にも及ぶ。都心には特急で30分圏内、都心に出なくてもすべてがそろうことを考えれば納得の数字だ。
住むことを再定義するうえで、所沢駅の開発にともにたずさわり、オープニングイベントにも参加した住友商事の安藤は、その事業の過程で「自然があり、娯楽もある。生活スタイルが変わるいま中核都市としての所沢を選択する人が多い」と実感したという。
進む西武の開発戦略
西武グループの拠点は、池袋と所沢だ。冒頭に記したように、同社は10年計画で拠点と沿線の発展をさまざまな事業で動かしている。掲げる4つの要素「暮らす・働く・学ぶ・遊ぶ」が、高い次元で実現されたとき、首都圏のどのエリアにも負けない生活圏になるとの考えからだ。
Forbes JAPANで取材した西武園ゆうえんちリニューアル計画の発表の折に、開発を担当する刀の森岡毅CEOが掲げたのも、事業規模の大小ではなく「幸せ」というワードだった。
2021年には、西武園ゆうえんちとメットライフドームのリニューアルが完成する。そういえば、その西側には多摩湖があり、このあたりは風光明媚なエリアでもある。家に帰ればグランエミオで買い物をし、都心へ仕事に行くなら特急で30分。働きかたも生活も変わろうとするいま、西武の戦略は、生活者をつつむ戦略として期待できるものだ。所沢市の多くの人が住み続けたいという意識を持っているこのエリアは、今後ますます活気を帯びるだろう。