コロナ禍で「日本経済がボロボロになった」のは本当か。データから考える

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経済や投資に関心を持つ大学生から、「いまの日本の株式市場はバブルだと思う」という指摘が寄せられた。理由を聞いてみると、コロナ禍で日本経済はボロボロなはずなのに、株価だけはその影響を受けずに高止まりしているからだという。

確かに、筆者もそんな印象を受けてはいるが、各社の業績を細かく見ていくと、必ずしもバブルとひと括りにはできないものがある。印象ではなくデータを見て考える習慣について、今回は書いてみたい。

消費税増税から日本経済は減速へ


日本に限らないが、確かにコロナ禍の影響は、経済にとてつもないダメージを与えた。内閣府が8月17日に発表した4~6月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除く実質ベースで、前期比7.8%減となった。

消費増税の影響で大幅減速した2019年10~12月期から、3四半期連続のマイナス成長となる。

また、今四半期の実質GDP成長率は年率換算すれば27.8%減だ。長期の時系列データを1980年まで遡ると、リーマンショックの影響が最も大きかった2009年1~3月期の同17.8%減を超えて、史上最大のマイナス幅になったことがわかる。

ここで1つ強調しておきたいことがある。コロナ禍の影響で日本経済が減速したということは間違いのない事実だと思うが、正確には、2018年10月から始まった景気後退の真っただ中であった2019年10月に消費増税を断行し、その後のコロナ禍によって、さらに日本経済が減速したという流れもあるということだ。

実際に、総務省が8月7日に発表した「家計調査」によれば、6月の消費支出(2人以上の世帯)は、物価変動の影響を除く実質ベースで前年同月比1.2%減と、9カ月連続のマイナスとなった。6月のデータから9カ月遡れば昨年の10月になる。つまり、消費増税時から日本の消費支出は減速傾向にあることがわかる。

人々がお金を使わなくなったわけだから、当然、企業の業績にも悪影響が出る。上場企業の2020年4~6月期決算を見てみると、当期純利益の合計額は前年同期比57%減となっている。コロナ禍の影響で日本経済はボロボロという学生の指摘は、データに基づいた事実であるとも言える。

コロナ禍で販売額を伸ばしたスーパー


もう少し細かく見てみよう。前述の通り、家計がお金を使わなくなっているわけだが、その影響を大きく受ける業種は小売業だ。

経済産業省が8月31日に発表した7月の「商業動態統計(速報)」によれば、小売販売額は前年同月比2.8%減となっている。しかし、業態ごとにデータを見てみれば、必ずしもコロナ禍の影響ですべての企業がボロボロになってしまったわけではないことに気づく。

下の図は、前出の「商業動態統計」に記載されている業態ごとのデータを図にしたものだ。業態は、百貨店、コンビニ、スーパーの3つだ。

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経済産業省『商業動態統計』のデータを基にマネネが作成。(注)2020年7月分は速報値。

小売業はコロナ禍で大きなダメージを受けたという印象を持つかもしれないが、その印象通りのグラフになっているのは百貨店ぐらいで、実はコンビニやスーパーはそれほど大きなダメージを受けていないという事実がわかる。

さらに見ていけば、スーパーにとっては、言葉は悪いが、コロナ禍は業績の追い風になっている。同じ小売業にもかかわらず、この3業態の違いはどこにあるのだろうか。
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文=森永康平

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