ビジネス

2020.09.07

プラットフォーム開発に学ぶ 「妄想から始める」という思考法

Compassionate Eye Foundation/Gary Burchell/Getty Images


これまでの組み立て方とは逆のアプローチで


プラットフォームの存在によって、世界中にプロダクトやサービスを迅速に提供しやすくなることは自明のことで、これを構築するためには、単一のプロダクトやサービスを検討し設計するのとは異なるアプローチが必要です。プロダクト設計的あるいはサービス設計的なアプローチを取るとうまく行きません。

なぜうまく行かないのかと言うと、プロダクトやサービスを検討する時に、どのような使われ方をするか(ユースケース)の分析から入ることが多いからです。

例えば、ゲーム機を開発する時に、レーシングゲームだけを念頭において設計するとします。そのゲーム機がレーシングゲーム専用であれば、コントローラーは「ハンドル」が最適解となるでしょう。

しかし、それでは、壮大な物語を描くロールプレイングゲームや、瞬間的な入力操作を要求される手に汗握るアクションゲームなどの多彩なゲームを遊ぶのには最適でなくなってしまうことは容易に想像がつくと思います。

これは極端な例ですが、つまりプラットフォームの構築は、こうした単一のプロダクトやサービスに限った使い方を分析するのとは全く異う観点で進める必要があるということです。

プラットフォーム開発は「妄想」から始める


私の経験上、プラットフォームの開発は、「抽象化」から始めるべきだと考えています。ここでの抽象化とは、先を見通して「妄想」することです。妄想と言うとネガティブな印象があるかもしれませんが、私は意識的に妄想することによって、一般的な見通しを超えた将来像が模索できると考えています。

新しいゲーム機を開発しようとした時、まず私は、これからどういったコンテンツが誕生してくるのか、それが登場する時の技術レベルや通信インフラ普及はどうなっているかなど、幅広い「妄想」をします。

数年先の見通しになるので、当然、ぼんやりしたイメージになることもありますが、できる限り妄想してリアルな仮説を立てることが重要です。その際、単にコンテンツ、つまりゲームソフトウェアの中身だけではなく、そのビジネスモデルや提供方法についても妄想することが重要になります。

提供方法というのは、DVDやブルーレイディスクのようなパッケージメディアなのか、オンラインダウンロードなのか、あるいはストリーミング型で提供されるのかということです。また、課金の方法についても、無料でもある程度遊べて、必要に応じて有料アイテムを購入するフリーツープレイ型なのか、それとも定額を払えば遊び放題の月額課金型なのか、または全く新しい形態にするのかなど、そういったコンテンツを取り巻くさまざまな要素についても妄想することが肝要です。
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文=茶谷公之

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