過密化する宇宙と「衛星衝突のリスク」を天文学者たちが指摘

Red Huber/Orlando Sentinel/Tribune News Service via Getty Images

先週、アメリカ天文学会は、メガコンステレーション(巨大な数の衛星の群れ)が天文学に及ぼす影響についてのレポート「SATCON1(Satellite Constellations 1)」を発表した。

SATCON1報告書は、メガコンステレーションが地球の夜空を大きく変えてしまうだけでなく、天体観測にも悪影響を及ぼすと指摘している。

「天文学者は、メガコンステレーションが及ぼす幅広い影響について理解し始めたばかりだ。地球低軌道上で大量の衛星を運用するコンステレーションが天文学研究や星空観賞にもたらすインパクトは、取るに足らないレベルから甚大なレベルまで幅広くなると推測される」

この1年ほどでメガコンステレーション事業が大きな発展を遂げる中、その課題にも注目が集まっている。スペースXが2019年5月に同社のメガコンステレーション「Starlink(スターリンク)」の衛星を打ち上げた際、その明るさが天文学に悪影響を及ぼすことが指摘された。

スペースXは、既に650基のスターリンク衛星を打ち上げており、8月30日にはさらに60基を打ち上げる予定だ。イーロン・マスク率いるスペースXは、将来的には1万2000基のスターリンク衛星を運用する計画だ。これまで地球を周回していた衛星の数は2000基であり、同社の衛星の数はこれを大きく上回る。

メガコンステレーション計画を推進しているのはスペースXだけでない。ジェフ・ベゾス率いるアマゾンは先月、FCC(連邦通信委員会)より通信衛星打ち上げ計画「プロジェクト・カイパー(Project Kuiper)」の承認を得ており、3236基の衛星を打ち上げる予定だ。

また、先週には英国企業「ワンウェブ(OneWeb)」が1280基の衛星を打ち上げる許可をFCCから取得し、合計2000基の衛星を運用する計画だ。ワンウェブは既に74基の衛星を打ち上げている。同社は経営破綻したが、英政府が同社の株式を取得して支援を行っている。

他にも、中国企業がメガコンステレーションの運用を計画している。メガコンステレーションの目的は、大量の小型衛星で地球を覆うことにより、地球上のどこにいてもインターネット通信を可能にすることだ。これは意義が大きいプロジェクトであり、運営会社に莫大な利益をもたらす。

衛星同士が衝突する危険


しかし、適切なルールや規制を設けなければ衛星の数が急激に増えてしまい、星空の観賞に悪影響を及ぼすだけでなく、衛星同士が衝突するリスクが懸念される。

SATCON1報告書の意義は大きいが、メガコンステレーションが次々と打ち上げられる中、忘れ去られてしまう恐れがある。SATCON2報告書は2021年中頃に発表される予定で、メガコンステレーションを巡る政策や規制について取りまとめるという。しかし、この報告書が発表されるのは、スペースXが1000基以上のスターリンク衛星を打ち上げた後だ。

国連もメガコンステレーションの政策と規制を検討中だが、発表までに長時間を要する見込みだ。衛星の打ち上げ許可が、一部の国の環境法令に抵触している可能性が指摘されているにも関わらずだ。

スペースXは、衛星を暗くする取り組みをしており、今のところ一定の成果を出しているようだ。しかし、スターリンクをはじめ、他のメガコンステレーションには、夜空を明るくしないことや、宇宙ゴミを増やさないためにさらなる努力が求められる。

今後は、メガコンステレーションに関する懸念を表明するだけでなく、将来の世代のためにもベストプラクティスや規制を迅速に導入し、地球の軌道や夜空を守っていくことが必要だ。

編集=上田裕資

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