その生産数は世界の10%を占め、7番目に大きな輸出国でもあり、価格面ではレザーアッパー付き靴部門で2番目に位置している(2017年データ、World Footwear Yearbook) 。
イタリアの靴ブランドの揺るぎない土台の根底にあるのは、他に類を見ない高いデザイン性、そして伝統的な製造工程と近年の革新的な生産処理能力であろう。特に世界のモードを牽引しているようなファッション性に優れたハイブランドのなかでは、イタリアのメーカーは常にリーダー的な存在であり、イタリアの靴業界は世界のファッションシステムの重要な柱のひとつであるともいえる。
MICAMを推進しているイタリア靴メーカー協会には、600社以上のメーカーおよび約7万7000人の職人が登録されており、年間総売上高は140億ユーロに上る。当然イタリア経済においても非常に重要な役割を果たしている主要産業のひとつであることは言うまでもない。
「イタリアといえば靴」と言われるほどの、強い文化的アイデンティティー、上質な素材を生み出す風土的な恩恵、洗練されたデザイン力、それらがmade in Italyスタイルを支えているのである。
今回は、イタリア国内に点在する選りすぐりのシューズブランドにクローズアップする。
BOEMOS
トスカーナが生んだふたりの熟練靴職人
トスカーナ州フィレンツェ近郊で1961年に2人の熟練靴職人、ボルディーニ氏とモンタネッリ氏が立ち上げた「BOEMOS」。ブランド名にはふたりのイニシャルBとMが使われている。有名ブランドのOEM(オリジナル・エクイップメント・マニュファクチャリング)としてその技術力を高め、その後は独自のマーケティングによりトレンドを程よく取り入れたオリジナルコレクションを発表。その高いクオリティの割にリーズナブルな価格が評価され、若い世代を中心に海外でも人気のブランドに。
創立者の2人の息子たちによって引き継がれているボエモス。マルコ・モンタネッリ氏(左)とブルーノ・ボルディーニ氏(右)
CERBERO
大人の色気を感じるビジネスシューズ
1955年創業の「チェルベロ」は、ナポリの伝統的な製靴技術を堅実に守り続けているファクトリーブランド。いかにもイタリアらしい、ファッショナブルで色気あるドレスシューズは、大人のビジネスシューズとして日本でも長年愛用しているリピーターが多い。エレガントな木型のフォルム、足全体を包み込む柔らかな履き心地をもたらすマッケイ製法、そしてなにより熟練の職人たちの手作業で一つひとつ丁寧に施されるアッパー部分の絶妙なカラーリングが、このブランドの特徴である。
イタリアを代表する芸術家、レオナルド ダビンチの没500年限定モデル。兄のフランチェスコ氏(左)と弟のエンリーコ氏(右)