・パンデミック(世界的大流行)の影響で、世界中の学校は遠隔授業に移行せざるを得なくなりました。
・これにより、オンライン授業と対面授業、双方の欠点が明らかになりました。
・平常の生活に戻っていく中で、2つの長所を組み合わせることにより、従来よりも効果的な教育モデルを作ることができるかもしれません。その方法をご紹介します。
効果的な教育が行われていたとは言えない?
新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の人々に劇的なインパクトを与えました。その多くは、従来の状態にすぐ戻ることはないだろうと考えられる中、教育に関しては「ニューノーマル」が早急に必要とされています。
世界の大半の国において、そして、ほぼすべてのレベルで、教育は試験を中心に据えて展開されています。試験の必要性と価値についての複雑な議論はさておき、学習に不可欠な要素であるエンゲージメントは必然的に後回しにされています。実践的で深い学習のためには、ディベート、ディスカッション、プロジェクト、コーチング、批評やフィードバックが必要ですが、これは達成が難しい上に評価は更に困難であるため、軽視されることが多いのです。
新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の多くの国では遠隔学習への移行を強いられました。講義にアクセスするためのネットワークとパソコン環境が学生側にあれば、オンラインへの移行は比較的容易であるということを多くの教育機関が認識しました。しかし、円滑に移行できたことによって、在宅教育に潜むより深い問題が露呈したのです。また、現在実施されているZoom講義は、最先端のオンライン教育でもありません。多くの国では、そもそも社会的距離がとられていたともいえる一方的な教育システムと、オンライン学習に関する現在の教訓を活かすことができていない遠隔学習という2つの世界の間で、板挟みとなっています。双方の欠点が露呈する形となっているのです。
今こそ、再構築の時であり、考慮すべき領域は、教育学、モダリティ(様式)、構造の3つです。学習の科学、急速に進化する技術力、変化していく仕事の未来はすべて、向かうべき方向を示しているのです。
1. 教育学
自然の摂理によって人間同士のふれあいを取り戻せたとき、教育者や学生は必然的に「これからどうすれば?」と問うでしょう。実際、世界各地の教室で行われている対面授業については、Zoomで配信すれば済むような講義が多すぎて、無駄になっています。そうではなく、「反転授業」を大規模に導入していく必要があります。
反転授業とは、オンライン講義と予習を一方向の授業として活用し、対面の授業は双方向の活動にとっておくというアイディアです。これは、新しい考えではありません。人文学など多くの分野や、マサチューセッツ工科大学(MIT)など多くの教育機関では、学生が学習にどっぷりと浸ることが大切だと理解しています。学習の科学によると、生徒が好奇心を持ち、脳内でドーパミンが放出されているとき、学習は最も効果的ということです。また、苦戦しながらもタイムリーなコーチングを受けたとき、そして、ある概念を発見し何かに適用できたときに、学生はよりよく吸収できることも分かっています。