中国の飲食業界では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で浮き彫りとなった問題への取り組みが進められている。高級レストランがストリートフードを取り入れたり、メニューをシンプルにしてコストを下げたり、ウェットマーケット(生鮮市場)とは距離を置き、動物福祉に焦点を当てたりしているのだ。これは、他国にとっても今後の道筋となるかもしれない。
米国は現在、目を見張る状況にある。
1560万人を雇用し、2019年には8630億ドル(約91兆円)の売り上げを出した米飲食業界は今、危機に陥っている。米レストラン業界では4月13日時点で、時給制従業員の91%、月給制従業員の70%近くが職を失っていた。
独立レストラン連合(IRC)のアンケート調査では、パンデミックを切り抜けられると確信していたレストラン経営者は5人に1人のみだった。経営者の56%は、新型ウイルス流行により5万ドル(約530万円)以上の債務が生じた。ブルームバーグによると、パンデミック後に再開できないレストランの割合は低くて25%、高くて80%に上ると見積られている。
影響を受けているのは被雇用者だけではない。ブルームバーグは、農業従事者や食肉業者、リネン製品企業やワイナリーなども経営難に陥っていると指摘している。観光客や消費者はもはや以前と同じ環境で食事をしたいとは思っておらず、世界中で同じ状況が起きている。
そうした中、今後の道筋を示しているのが中国だ。
世界経済フォーラム(WEF)によると、中国の飲食業界ではロックダウン(都市封鎖)の終了後、業界の刷新ではなく、むしろそれまであったトレンドの加速が起きているのだという。
中国経済はパンデミック前からすでに成長が鈍化し、高級レストランはより手頃な価格帯のメニューを提供するようになっていた。上海のレストラン「甬府」はビストロをオープンさせているし、同国唯一のミシュラン三つ星中華レストラン「新栄記」はより質素な店舗をオープンさせ、その後は麺料理を中心としたシンプルな料理店をオープンさせた。