しかし、今から20年以上前にその領域に気づき、推進してきた人物がいる。「SAMURAI」クリエイティブディレクターの佐藤可士和だ。大学卒業後、博報堂のアートディレクターとして活躍してきた佐藤は、「デザインにはもっとできることがある」と2000年に独立。経営とクリエイティブの融合において第一線を走り続けている。
ユニクロのグローバル戦略、セブンイレブンのプライベートブランド、TSUTAYAのリブランディングなど、私たちが日常触れる企業や商品の多くを手がけているが、その中でも独立初期から携わっているのが三木谷浩史率いる「楽天」のブランディングだ。
その楽天においては今年7月、4種類のコーポレートフォントを開発したことを発表した。「これでデザインのベースが揃った」という佐藤に、17年にわたる楽天のブランディングとその戦略について聞いた。
独立後いち早く、三木谷からの誘い
博報堂での11年のキャリアを経て、佐藤が「SAMURAI」を立ち上げたのは2000年のこと。「デザインには、広告だけでなく、企業のあらゆる課題を解決する力がある」という思いからの独立だった。
当時は、“ブランディング”という言葉こそあれ、特に日本ではまだ浸透していない時代。そんななか、「今後の会社を大きくしていくには、ブランディングやデザインの力が重要になる。一緒に挑戦してほしい」と、いち早く声をかけたのが三木谷だった。
「2003年、楽天が六本木ヒルズに移り、ステージが変わるタイミングでした。これは今も変わりませんが、二人で膝を付き合わせて、事業の展開のイメージやルールについて話し合いました。三木谷さんの頭の中にあるものを、僕がフォーマット化したり、ビジュアライズしたり。戦略を可視化していくイメージですね」