サンフランシスコ本拠のRipplingは8月4日、Founders Fundが主導するラウンドで、1億4500万ドル(約153億円)を調達したことを明らかにした。
Ripplingの評価額は13.5億ドル(約1425億円)に達し、2019年4月に行われた前回ラウンドでの評価額2億9500万ドルの約5倍となった。Zenefitsは脱法行為が明るみに出て、創業者のConradは一時、自宅に引きこもる状態だったが、彼は再び起業家として脚光を浴びることになった。
「これまでの努力が報われて嬉しく思っている。私は、資金調達がスタートアップの命取りにつながりかねないことを、誰よりも理解しているつもりだ」とConradはフォーブスの取材に述べた。
今回調達した資金は事業拡大に使われる予定だが、Conradは今後、資金調達環境が悪化した場合のセーフティネットとしても考えているという。「私は、これまでの経験から自分が将来の環境変化を予測するのが苦手であることを知った。だからこそ、目の前の資金は確実に手に入れておきたいと考えている」と彼は話す。
Ripplingは、給与支払いの自動化に加え、新入社員が使うソフトウェアやアプリ、ワークグループの管理も自動的に行ってくれる。また、社員の昇進や異動、退職に合わせたアップデートも行ってくれる。このような管理サービスは地味だが、中小企業にとっては欠かせないツールと言える。
Ripplingの昨年の売上は1000万ドルに達し、新型コロナウイルスの逆風をものともせず、順調に中小企業のユーザーを増やしている。
Conradは、Zenefitsでエンジニアリング担当ディレクターを務めたPrasanna Sankarと共にRipplingを立ち上げた。同社は今年、フォーブスの「次世代スタートアップ(Next billion-dollar startups)」に選出された。Zenefitsも過去に選出されており、Conradは2度リスト入りを果たした唯一の創業者となった。
「人生は自分との闘いだ」
Zenefitsは、シリコンバレーの急成長スタートアップの中で最初に失墜した企業の1つだった。ピーク時には、Conradの指揮のもと、同社の評価額は45億ドルに達した。しかし、ブローカーがライセンスを取得していない州で健康保険を販売するなどコンプライアンス違反が明るみに出ると、同社の成長は停滞した。
SEC(証券取引委員会)や保険監督機関が調査を開始し、Zenefitsへの圧力が強まる中、Conradは2016年2月にはCEOを辞任し、自宅に引きこもる日々を送ったという。
「私は大きな成功と失敗を両方経験し、これまでに何度もこのサイクルを繰り返してきた。人生は常に自分との闘いなのだ」とConradは語った。