国際的視点からの分析
GDP比で100%を超える負債水準は、米国にとっては比較的新しい事態だ。一方、日本は1990年代半ばにすでにこの水準を突破し、いまや負債がGDPの200%を超えている。
もちろん、日本のケースはやや特殊だ。日本は数々の経済問題を抱えているが、政府債務の管理はこれまで、主要な懸念事項にはなっていない。それでも、巨額の負債を抱えたまま何とかやってきたとはいえ、いまや日本のGDP比の負債水準はベネズエラやスーダンと肩を並べる。これらの例は楽観を促すものではないが、日本は、負債がどのレベルで制御不能になるのかは明確ではないことを示している。少なくとも、日本はまだそこに到達していない。
負債は、問題になるまでは無視できる。だが、いざ問題になったら、手が付けられない事態に発展しかねない。パンデミック危機の初期段階である3月には急騰したものの、このところの米ドルの弱さと、金などの現物資産の強さは、米ドルに対する懸念があることを示唆している。コロナ不況に対抗する大規模な刺激策によって負債が膨れ上がったこともその一因だ。ただし現時点では、どれも短期的な取引傾向にすぎない。
米ドルは金融システムの要であり、こうしたシステムの潮目が変わるには、おそらく数年から数十年の期間を要するだろう。しかし、現在の米国政府債務の傾向が続けば、長期的な信頼が揺らぎかねない。そのことに、格付け機関や金融市場は気づき始めている。
今のところ、米国の政府債務は懸念事項にはなっていない。だが、もし懸念事項になったとすれば、状況は深刻なものになるだろう。米国は今、少しずつそのシナリオに近づきつつある。