これからは「公私融合」の時代に コロナ禍で高まるコンシェルジュの需要

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仕事とプライベートの両立ができる社会づくりを目指し、日本初の「コーポレート・コンシェルジュサービス」を立ち上げたTPO。2016年に創立して以来、法人向けのサービス「YourConcierge」を展開してきた。現在サービスを導入している20社のオフィスにはTPOのコンシェルジュが常駐し、従業員1万名のプライベートをサポートしている。

同社は今年の5月、コロナ禍で生まれたユーザーの新たなニーズに応えるべく、個人向けサービスをリリース。在宅ワークならではの悩みを解消するオンラインサービスを提供している。

TPO代表のマニヤン麻里子氏は「今回のコロナ禍によって、今までは見えづらかったプライベートの側面が浮き彫りになった」と語る。ライフワークバランスが見直されつつある今、TPOはどのようなサポートを提供していくのだろうか。

コロナ禍が社会にもたらした価値観の変化を踏まえ、仕事とプライベートの関係性や、今後TPOが目指す姿について話を聞いた。

日本は「ライフワークバランス」の後進国


──はじめに、TPOの創業の経緯について教えてください。

元々、私は外資系の金融機関で働いていました。楽しく働いていた一方で、子育てとの両立には難しさを感じていて。今の日本には、仕事とプライベートを両立できる仕組みがないことに気づいたんです。そこで、子育てをしながら働ける社会をつくろうと、2016年に株式会社TPOを創立しました。日本初の「コーポレート・コンシェルジュサービス」として、会社員の皆様が快適なプライベートを過ごせるようサポートしています。

2年間の助走期間を経て、本格的にサービスを開始したのが2018年。2年間で20社に導入していただき、現在は1万名のユーザーを抱えています。

──近年はようやく「ライフワークバランス」という概念が出てきましたが、創業当時の4年前の日本では、「ワーク」の比重が大きかった印象があります。プライベートのサポートを謳うこのサービスは、周囲からの理解を得られないこともあったのではないでしょうか。

おっしゃる通りです。4年前は女性活躍の動きも今ほど進んでおらず、男性が子育てに時間を割くことも難しい世の中でした。創業当時から掲げている「ウェルビーイング」という言葉も浸透していなかったので、会社について説明をする際、不思議そうな顔をされることもよくありました。

しかし、日本では未だに馴染みの少ない本サービスも、欧米では当たり前。フランスでは現在大企業の8割以上、アメリカでも大半の企業が、従業員カウンセリングの一環としてコンシェルジュサービスを導入しています。欧米では、プライベートの充実度が仕事でのパフォーマンスに影響を与えると考えられているからです。

実際、アメリカでは「プライベート面の問題が解決されることで、欠席や早退、遅刻を意味する“アブセンティズム”が69%減る」という統計が出ています。客観的な事実として証明されていますから、「コーポレート・コンシェルジュ」は今後日本でも必要不可欠な存在になると確信しています。


TPO代表のマニヤン麻里子氏

「画面越し」だからこそ見えるつながりがある


──今年の5月には個人向けサービスもローンチされたとのことですが、それまでは法人向けサービス1本でしたよね。まずは法人向けサービスの内容について教えてください。

法人向けサービス「YourConcierge」は、企業ごと、もしくは複数企業が入居しているオフィスビルごとに導入していただいています。企業のオフィスやビルのフロアにコンシェルジュが常駐し、そこで働く方々のプライベートに関するご相談に乗るんです。実際に寄せられるご相談は「休日のお出かけスポットに関すること」から「子育てや介護に関すること」まで、多岐にわたりますね。
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文=倉益璃子

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