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2020.07.27 08:00

DX時代は「データベース」活用が鍵に オールドメディアの勝ち筋


各支局に自社記者を配置している大手新聞社は、他デジタル・メディアに対し圧倒的なリソースを抱えている。支局員に5Gスマホをもたせ、災害や事件を積極的に動画配信、「今起きていること」を伝え、まずはユーザーを呼び込む。そこからディテールを取材した記事へと誘引するなどの方策もあるだろう。先日の九州地方の豪雨など、佐賀、熊本、大分、鹿児島など各支局員が同時に現場の実況を敢行していたなら、ジャーナリズムとして新たな試みになったのではないか。しかも、そんな戦略を想定できるのは、リソースにあふれる大手新聞社ぐらいだ。これは大手通信社にも当てはまる。

私自身、ある新聞社で「過去記事はすべてAIに喰わせて活用すべき」とレクチャーした経験もある。AP通信が英文ではすでにAIで短文記事を生成している。日経や朝日が実験的に取り入れているものの、日本の新聞社もAI、ビッグデータによる分析に全力で取り組むべきだ。

ヤフーニュースなどのキュレーション型メディアの弱点は、過去記事だ。契約内容はさまざまだが、新聞社からの記事は2週間程度を目安に同社のDBから削除しなければならないなどの足かせがある。

読売、朝日ともに100年以上にわたる膨大な記事をDB(データベース)化し、すでに商品化しているにもかかわらず、これを活かしきれていないようだ。 

例えば、TwitterのトレンドをAIでクロールし、そのトレンドに沿う過去記事を投下し、「7月20日には~」と自社DBに吸引する戦略もあるだろう。1969年7月20日、人類が初めて月面に立った日の特集を振り返れば、意外な訴求力に気づくかもしれない。DB活用こそ、キューレション・メディアの弱点をついた戦略展開が可能だろう。

日本初の宇宙飛行士、元TBSの秋山豊寛氏は、ニュースの重さが、『人々にとって何が重要か』という基準から『人々が何に興味を持つか』へと変異した「大衆迎合主義」になったと指摘している。スポーツ紙が芸能こたつ記事を並べ、ヤフーからページビューを稼ぐ現状などは、まさに「大衆迎合」そのものだ。

「悪貨は良貨を駆逐する」、グレシャムの法則は、日本の現状にも当てはまる。大衆迎合的なイエロー・ジャーナリズムは世間に出回り取り沙汰され、着目すべき良質なコンテンツは鍵がかかった課金階層に埋もれ、人目に触れることはない。

新聞各社は、ネット時代に打ち勝つことなく、戦略なきまま大衆迎合主義に埋もれてしまうのか。「ジャーナリズム」を活かすも殺すも、データ活用次第だと、ニューヨーク・タイムズや新興デジタル・メディアが示しているというのに。

新聞メディアの再興を信じるユーザーとしても、動向を注視している。

連載:5G×メディア×スポーツの未来
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文=松永裕司

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