谷本:尾原さんは普段、どうやってバランスをとられているんですか?
尾原:変化の時代って、瞬間瞬間でジャッジしなきゃいけないんですよね。かといって、ジャッジメンタル(批判的)になったら、選択が偏るので危ないんです。「べき」ってすごく危ないサインなんですよ。
例えば僕にとっての「べき」は、「相手が自分らしく最大化できるよう、労力を最小化させること」なんですよね。仕事をするうえで、相手がらしさを発揮できるように、本人にかかるコストを最小化することを僕は喜んでやります。机の整理でも、タクシーを呼ぶことでもなんでも。
これは同時に僕らしくいられることでもあるから、僕にとっては元気なんですよ。でも相手にも「同じようにやってね」と押し付けることではないですよね。だから、「べき」って自分にとってはエネルギーだけど、相手に押し付けた瞬間に非合理に変わる。
わかりやすくいうと、世界で1番、自分の「べき」で元気になって、相手に押し付けている人がトランプ大統領ですよね。彼は微塵も自分がおかしいって思ってないですから。
自分にとっての「べき」がすべての人にとって正しいと思っているから、トランプさんはずっと元気なんです。でも他人からすると、「お前の『べき』は、俺にとっては『べき』じゃないから迷惑だよ」となる。自分にとっての「べき」って、それくらい無意識に押し付けてしまうものだということを、まずは自覚することが大事だと思います。
グローバルに出るなら、気負わないやり方で
谷本:尾原さんは常に世界中を飛び回っているので、グローバルについての質問もしたいです。
尾原:僕は国境に関係なく、人とご縁を紡ぐのが好きですね。
谷本:これからの個の時代、いわゆるドメスティック色が強い日本人が世界に出る時には、どういったスキルが必要だとお考えですか?
尾原:日本は島国ということで守られてきた分、生まれ育った場所や学校、会社など、「どこに所属しているか」に重きを置いちゃいますよね。まず、そこに重きを置かないことが前提です。自分がどこの誰ってことにこだわらない。
日本に生まれたから醤油やアニメについて詳しい、というのは、ひとつの個性としていいと思います。でも海外の人からすれば、僕は「ITに詳しい尾原」、かつ「日本のことを知ってる尾原」であって、日本人であることにそこまでの需要はないんです。
ビジネスパーソンとしていざ海外に出ようとすると、どうしても「日本の政治を語るべき」とか「もっと日本の歴史を熟知してから行くべき」とか、世界のなかの日本人代表、みたいに気負いしすぎることがあると思うんですね。でもそういう「べき」に縛られる必要はありません。