新型コロナによる在宅勤務生活が始まってから、私も何度か「猫を飼いたいな」と思ったことはあったからだ。同時に、大きな疑問も現れた。
私たちはなぜ(特に新型コロナ禍で)猫を求めるのだろう、ということだ。
外出自粛による孤独を埋める癒しの存在として? それとも単に家で過ごす退屈しのぎの遊び相手として?
つまり、人間にとって猫とはなんぞや、ということを考える良い機会なのかもしれない。そしてその定義は新型コロナによってどう変わった(または変わらなかった)のだろうか。
猫と人間の幸せな付き合い方を考察すべく、猫のエキスパートたちに話を聞いた。
新型コロナ禍で売れ続ける猫専用トイレ
「おかげさまで、新型コロナが逆に追い風のようになっています」。こう驚きを口にするのは、猫専用のスマートトイレ「トレッタ」を開発販売するトレッタキャッツ(神奈川県藤沢市)取締役の松原あゆみさんと、前職が保護猫カフェ「ネコリパブリック」(ネコリパ)店長で、3月にトレッタキャッツに加わった嬉野千鶴さん。
トレッタキャッツ取締役の松原さん
トレッタは、猫が排せつするたびにセンサーで猫の体重や尿量、尿の回数などを測定し、スマホアプリで飼い主に通知するスマートトイレ。数値は、トレッタキャッツの獣医師もチェックしており、異常が見られた猫に対してはLINEでアラート通知が出される。健康管理などについて獣医師に相談できるオンライン往診も行う。
初代トレッタの後継機「トレッタ2」を今年2月に発売したところ、1日で在庫150台が完売し、4月に再販したものの、今度は1時間で150台が売れてしまったそう。
松原さんは、「新型コロナによって、飼い猫の居住環境をよくしたいという、飼い主さんたちの思いが強くなったのではないかと思います」と分析する。
「人々がペットに費やすお金は増えていると思います。特に医療の面ですね。『ペット』というよりも『家族』としてしっかり育てる意識が大きくなっている気がします。だからこそ、ペットテック市場は単価は高いにも関わらず伸び続けているのかなと」
トレッタキャッツの猫エバンジェリスト(伝道師)の嬉野さん。取材中、何度も猫が画面に現れた
また猫を12頭(!)飼っているという嬉野さんは、自身も在宅時間が増えたことで、猫の面倒をより丁寧に見ることができるようになったという。
「以前は毎日お店に勤務していたので、日中は家を空けていました。なので帰宅したら最低限の世話しかしてあげられず、『猫たちの身に何かあったら後悔するかもしれない』と思っていたのですが、今は在宅勤務なので、猫たちの状態をよく見ることができています」