このニュースを最初に報じたのは7月1日のNikkei Asian Reviewだ。iPhone 12シリーズは5G通信に対応し、リフレッシュレート120Hz以上のディスプレイを搭載する見通しだが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、検証プロセスなどに遅延が生じたという。
Nikkei Asian Reviewの記事は次のように伝えた。「パンデミック後の工場の閉鎖や労働者不足によって、5Gモデルの量産化は4週間から2カ月に及ぶ遅延に直面した。アップルは同社に先駆けて5G対応を果たしたサムスンやファーウェイに、なんとか追いつこうとしている」
アップルはこれまで毎年決まった発売スケジュールを維持してきた。3月にiPadなどの最新モデルを発表し、6月には開発者会議WWDCを開催し、10月にMacBookのアップデートを行ってきた。9月の新型iPhoneの発表会は同社にとって非常に重要だ。
アップル社内ではiPhone 12の発売を4カ月程度遅延させ、2021年初旬にするとの議論も起こった模様だが、Nikkei Asian Reviewによるとこの案は否決され、最大2カ月の遅延が上限とされたという。
これはつまり、11月の発売を意味し、年末商戦のスタートである11月末のブラックフライデーには間に合うことになる。このスケジュールであれば、今年の売上に与えるダメージも少ないだろう。
ただし、これを実行するにあたっては慎重な販売戦略が必要となる。予約注文で初期のオーダーを確保することも考えられるし、大幅な価格引き下げも有効かもしれない。
もう一つ別の選択肢としては、生産台数を絞り込む方向性もあるだろう。例年と同様に、9月に発売を開始するが、ごく限られた台数しか用意せずに販売を開始するというやり方だ。
しかし、アップルがなんとかこの困難を切り抜け、通常通りの生産ボリュームを予期せぬ事態の中で実現する可能性も捨てきれない。その場合は、同社の適応能力が人々の予想を超えることを見せつけることになる。パンデミックに襲われた今年は、例年以上にアップルの実力が試される年になりそうだ。