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2020.11.03 12:00

ミシュラン史上初の一つ星ラーメン店「蔦」、サンフランシスコでも連日長蛇の理由


──蔦はミシュランの星を獲得した世界初のラーメン店として称賛されています。この店が他の店よりも抜きんでているのはなぜでしょう?

ラーメンは昔から手軽で美味しい、サラリーマンや学生たちの味方のファストフードとされてきました。その一方でラーメンを愛する人たちは、ラーメンは手の込んだ芸術品とも言える料理にも、高い金を払うだけの価値のある大満足の逸品にもなる可能性を秘めていると、ずっと信じていました。そんな彼らの考えが正しかったことを、蔦がミシュランの一つ星を獲得するという予想外のかたちで証明したのです。

──蔦のラーメンが他とは違うところは何なのでしょう?

大西さんはラーメンの種類よりも質にこだわり、それを誇りにしています。蔦では、数あるラーメンのなかでも一番由緒のある、そして一番シンプルな味をお客様に味わっていただこうと、「醤油soba」と「塩soba」のふたつを目玉にしています。日本で最初に誕生したラーメンは醤油味でした。

大西さんは醤油ラーメンをベースにして、そこにトリュフとトリュフオイルという西洋料理の要素を取り入れて伝統の味と融合させ、それを幾重にもかさねて今までにないラーメンを作り上げました。

麺はさまざまな種類をブレンドして毎日打つ自家製麺で、香り高い独特の風味を醸し出しています。

醤油だれは、大西さんが日本で使っているものと同じく、和歌山県産の特別醸造の二年熟成丸大豆醤油を二種類合わせて作っています。この独自の醤油だれは、丸鶏や野菜、アサリなどの魚介類を微妙な火加減で温度管理しながら炊いて、素材の”うまみ”を充分に引き出した”出汁”とぴったりとマッチします。このふたつをミックスさせて、蔦のベースとなる自然の”うまみ”を生み出しているのです。


チャーシューをトッピングしたラーメン

──店名にはどんな意味が込められているのですか? 店の歴史を少しだけ教えてください。どうしてこれほど人気があるのでしょう? ”最高のなかの最高の店”と呼ばれる理由は?

店名の〈Japanese Soba Noodles〉には、”ラーメンを日本が世界に誇る麺料理にしたい”という大西さんの夢が込められています。

蔦は2012年に東京の巣鴨で誕生しました。店主の大西さんはラーメン店を営む家に生まれ、18歳から父親の店で修業したのち、25歳でファッション業界に移って世界中を飛びまわっていました。それから紆余曲折を経てラーメンへと戻りました。

大西さんは自身のファッションセンスと若い頃のラーメン修行、そして伝統的な日本の感覚を活かし、そこに西洋料理の手法を取り入れました。日本に昔からあるラーメンにヨーロッパのトリュフを完全に融合させて、いまだかつてない画期的なラーメンスタイルを創造したのです。
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翻訳・編集=黒木章人/S.K.Y.パブリッシング 構成=石井節子

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